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怒れる叔父さん

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[登場人物]

・私 (都会で夫と二人暮らし)
・夫

・お義父さん(夫の父・地方でお義母さん、弟と3人暮らし)
・お義母さん(夫の母)
・弟(夫の弟・無職・実家暮らし)

・叔父さん(3人兄弟のお義父さんの弟・妻と同地方で2人暮らし・子供なし)
・叔父さんの妻(叔母さんが2人出てくるので叔父さんの妻とする)

・叔母さん(3人兄弟のお義父さんの妹・嫁いで同地方で夫と2人暮らし)

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納骨の儀が終わって叔父さんのところへ向かった私と夫。

弟はその後5分後くらいにこちらに来て一緒に叔父さん夫婦の前に座った。

「それで、どうしようと思ってるんだ」

開口一番、夫に叔父さんが聞く。

夫はお義母さんの介護の手続きや段取りなどを説明したが、
どうやら叔父さんはお義母さんのことを聞きたかったわけではなかったようだ。

叔父さんは
私達が納骨の儀に遅れて立ち会えなかったこと、
葬儀費用を一切支払っていないこと、
納骨の日にお供えものや香典のひとつもないこと
などとにかくお怒りの様子だった。

もちろん、上記は私達にも問題があったのは確かだし、
言われても仕方がない部分がある。
言い訳になるが
夫が葬儀費用を支払おうとしなかったのは生前永きに渡って家に送金してきた事実があり、
それを貸して欲しいという意味合いで渡したものだからお義父さんから返ってきていないのも夫としては腹立たしいらしく、
葬儀までは支払いたくない、という夫の意向。
そして納骨に間に合うようにタクシーを使うべきだったにも関わらず、
度重なる帰省の交通費の嵩み具合でタクシーにお金を使いたくないばかりに駅で時間を潰して電車を待った夫の意向。
私は都度、葬儀費用一部負担した方がいいんじゃないか、
叔父さんにまた言われるからタクシー使ったほうがいいんじゃないか、
と打診したが、夫の気持ちは変わらなかった。

ただ、納骨の日に香典を持っていかなかったことは確実に私に落ち度がある。
法事には香典を持っていくものなのはわかっていたが、
これまで私の実家は葬儀後同日に納骨されてきたため、納骨の日、なんて言う日はなく、
納骨だけ伺えば良いものと思ってしまっていたからだ。
香典は50日(仏教でいう四十九日)法要というものがその後この宗教にはあり、
そこで一区切りとなるため50日法要に香典を渡そうと思っていた。

叔父さんのお怒りは治らず、怒りの矛先は私単体にも向けられた。

「〇〇(私)さんの実家にはお義父さんがなくなったことは言っているのか」

と聞かれた私は、

「亡くなったことはもちろん伝えていますが、
香典は受け取らないと叔父さんに言われていたので何もしないでいいと伝えていますが」

叔父さんは呆れた顔をした。
「そういうことじゃないだろう…」

・・・。
むっとした私は何が欲しいんだと苛立ち、
「え、お金ですか?」と聞くと

「いらないと言っても持ってくるのが普通だろう、電話のひとつもないし。
まるで心がないじゃないか」

・・・。
なら、はっきり最初から香典いらないなんて言わないで欲しい。
一千も支払っていない私達がよっぽど腹立たしいらしい。結局お金なのだ。
また叔父さんと私の両親はほとんど接点がない。
私達は、お義父さんが足の調子が悪く遠出が困難だと言われてしまったため両家の顔合わせなく結婚した。
その時はお互いの両親が電話で話しただけだったので、お互いの顔も見ていない。
叔父さんと私の両親は電話で話した事もなく、1,2度贈り物をし合っただけの間柄。
そんな関係で、お義母さんもまだ生きているのに、電話するなら実家だし、叔父さんに電話するなんてまず考えが及ばない。
親は実家に電話しようとしていたが、ほぼ動けないお義母さんが電話をとれるわけではない上に、
他人との接触がほとんどない生活を送っている、他者との会話のやりとりがスムーズでない弟が電話に出ると親もびっくりすると思った私は、
電話もこんな状況だからしなくていい、と伝えていた。

私は叔父さんに言われたこの言葉で、一層叔父さんへの怒りが倍増した。
親のことまで言われるとは。信じられない。
お金を出したものが一番偉くて何を言ってもいいのか。
そんなに費用を支払うのが嫌だったなら、
なぜ最初から「叔父さんが独断でやりたいように(葬儀を)するから」と、
私達に相談もなしに突き進んだのか。

叔父さんは葬儀費用の他にも、お義父さんが残して行った負の遺産があることを話した。
もちろん予想はしていたが、その費用もワシが払わないかんのかとお怒りだったので、
それはこっちに詳細教えてもらえたらこっちで処理するから、と夫は言った。
(が、その後詳細の連絡がくることはなく今に至る)

叔父さんは自分がどれだけお金を払わないといけないのかと懇々と私達に説教し、
いつの間にか話は代々信仰してきた宗教の話に擦り代わり、
今後どうやって墓を守っていくのか、普段からきちんと手を合わせてないだろう、
実家の神棚をどうするつもりだという話しが続いた時、
叔父さんの妻が私と目が合うなり
「〇〇(私)さんも言いたい事あるんじゃないの」
と話をずっと黙っていた私にふった。

言い返したい、怒り狂いたい気持ちでいっぱいだった。
でも、もう気持ち的に諦めてしまった。

そうか、言い返さない。と決めていた夫の考えがようやくわかった。
言い返しても結局宗教の話になったり、話が噛み合わなかったり。
話し合いが話し合いにならないのだ。
それなら適当に流してまるくおさめる方が時間の無駄がなく、
叔父さんのいない場では好きなように振る舞える。
そう思うと言い返したい気持ちもなくなって諦めの感情に変わった。

「宗教の違いで知らない点やわからない点が多々あったと思うので、
それは申し訳なかったです。夫に聞いてもわからない事があったので。」
「神様(宗教)のことが一番大事なのはわかるんですけど、
私達は今生きてるお義母さんも同じくらい大事なので(本当は断然お義母さんの方が大事)
それだけは優先順位前後するかと思いますがわかってください。」

叔父さんはお義母さんのことをどうするか、というのを気にはしていたが、
お義母さんの体を気遣うものではなく、お義父さんがいなくなった今、
早く私達にお義母さんを引き取ってもらい、可愛がってる弟は自分の手の内にいれておきたいという考えだけだ。

実家も、ボロボロの家だとか、金目のものがなにもないと言い、
挙句の果てには、
「お義母さんは自分でなんでもやろうと思ったらできるのに、〇〇(弟)ちゃんに甘えてるんだわ」
とお義母さんが自分で靴下を履けなかったエピソードを話しながら叔父さんと叔父さんの妻が笑った。
その時、なんと弟も笑ったのだ。

叔父さん夫婦がお義母さんの状況を笑うのも許せなかったが、
今まで世話をしてきた弟もへらへらと笑ったのは見逃さなかった。
いっときでも介護の仕事がしたいと言った人が、お義母さんの気持ちも考えずに笑うのは
想像力のなさにがっかりした。本当にがっかりした。
自分が世話してきた人を、ましてや自分の親を馬鹿にされて一緒になって笑うなんて。

一度全員お義母さんの生活を送ってみればいい。
外に一歩も出ず、テレビを見続け、今日が何日かも何時かもわからずご飯をだされて食べる。そしてまた、お風呂にも入れずに寝る。そんな日を繰り返してみればいい。
体がなんともなくても、生きるには気力がないと生きれないということを知らないんだろう。
そんな日々の中で生活していれば誰だって出来てたこともできなくなるんだ。

そうした時、実家から電話が来てお義母さんが動けないと連絡が来たという。

え?

弟は私達より後からきたにも関わらず、
お義母さんをそのままにしてきたせいで、
お義母さんの膝の上には折り畳みテーブルが置かれたまま、身動きが取れずにいたのだ。

私達はてっきり弟がお弁当の片付けをしていたので、
そのままお義母さんのこともマットレスの上に戻して来てくれていると思い込んでいた。

弟は先に実家へと戻った。
私達も行きたかったが叔父さんに呼び止められた。まだ話があると。

私が話の中で一旦謝った事で二人の気持ちが少し落ち着いていた。
「これからはわからない事があればすぐに電話して聞いてくれればいいから」
と言われた。
続いて「宗教に関する事は特にだ」とも言われた。
そしてまた宗教の話になった。

まず、実家の神棚を私達の自宅へ移したいと言う。
その場合、賃貸の今の家では自由にできないから
中古でもいいから家を買って、ひと部屋を神棚の部屋にしなさいと言った。

え?

神棚のために家を買うという大きな決断をする人がこの世にいるだろうか。
もう呆れて何も感じない。
今の家ではどんな手の合わせ方をしているのかを聞かれ、
朝水を変えて手を合わせていると伝えると、それだけでは足らないと言われた。
まず毎朝お湯を沸かし米を炊くこと。そしてその水と米を供える。
沸かしたお水の残りはその日一日かけて飲み干すこと。
備えたお米は水分が飛ぶので翌日米を炊く時に一緒に入れて炊くこと。

できるわけがない。
夫婦共働きな上に毎朝米を炊かない、ましてや週に2,3回炊いて冷凍するサイクルの我が家では
かなりやりたくない作業。
そいうか、そもそもできないというか、やりたくないのだ。
私はお義母さんが気がかりで早く話を終わらせたかったので受け流していたが、
最後に、

「あと女の人は生理があるから、生理中はお供えはしてはいけない。全部その間は〇〇(夫)がやるように」

叔父さんの口から生理という言葉を聞いてゾワッとしてしまったのと、
宗教の決め事としてそういうことがあることに重ねてゾワッとした。
ぜったい言うとおりにしたくない。
そう思いながら「はい」と返事したらまた実家から電話が来た。

お義母さんが体調悪いという。
叔父さんの話を無理やり終わらせて実家に戻るために席を立った。
「何かわからないことがあればなんでも言って」と言われて終わったが、
何も聞くことはないし電話もかけたくない。縁を切りたい。私は叔父さん夫婦を心底嫌いになってしまった。


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