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#206 【便秘集中講義】第10回:Bacillus coagulansとラクチュロースの併用が機能性便秘を改善する。

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便秘集中講義第10回の今回から、2回に渡ってプロバイオティクスと腸内環境、便秘の関係についてお話します。今回ご紹介するのは、Bacillus coagulans菌(以下、コアギュランス菌)とオリゴ糖の一種であるラクチュロースを併用した、シンバイオティクスによる便秘の改善効果を調査した研究です。研究タイトルは、"Effect of Bacillus coagulans Unique IS2 with Lactulose on Functional Constipation in Adults: a Double-Blind Placebo Controlled Study"(二重盲検プラセボ対照試験による、成人機能性便秘症に対するラクチュロースとコアギュランス菌併用効果)です。

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Bacillus coagulans

まずは、聞き慣れないBacillus coagulans菌とはどのような細菌なのか説明します。そもそも、プロバイオティクスとして芽胞形成菌の検討はほとんどされていません。その中で、近年Bacillus coagulans菌をプロバイオティクスとして用いることで、過敏性腸症候群、急性下痢、腹痛、肝硬変、細菌性腟炎に対する臨床効果が検討されており、注目されています。

プロバイオティクスとして注目されているのは、B. coagulansの中でもUnique IS2株です。本研究でも、コアギュランス菌のUnique IS2株の影響を調査しています。

そもそも、コアギュランス菌は、腐敗した牛乳から分離された通性嫌気性細菌で、熱に強いことが知られており1) 、工業的な観点で注目されています。酸素や熱に強いことから、食品成分の分解をすることで食用に適さなくなってしまう変敗の原因菌としても知られており、缶詰における変敗が問題になったりします2)。

生存しやすいからこそ、プロバイオティクスとしての効果が期待されます。

ラクチュロース

ラクチュロースは難消化性オリゴ糖の一種で、プレバイオティクスの1つとして便中のビフィズス属菌を増やすことが知られています3)。消化を受けないことで、腸内細菌によって利用され、腸内細菌叢に影響を与えることが期待されています。

本研究では、コアギュランス菌とラクチュロースを併用することで、便秘の改善効果を狙っています。

コアギュランス菌とラクチュロースの併用で便秘が改善

本研究では、①プロバイオティクスとラクチュロースの併用、②ラクチュロース投与、③プラセボの3群の比較を行います。1日15 mLのいずれかの溶液を、最長4週間服用し、1週間に3回以上の自発的な便が出るかを評価します。また、Bristolスケールで便の状態を評価したり、便秘重症度尺度の評価なども行います。

結果として、コアギュランス菌とラクチュロースの併用で便秘が改善されました。

  • 併用群、ラクチュロースのみ投与群において排便回数の有意な増加が確認

  • ラクチュロース群と比較して、併用群において有意に高い排便回数が3週間目時点では確認され、4週間目では、ラクチュロース群と併用群の有意差はみられず、いずれもプラセボ群と比較して多い排便回数を記録

  • 便の硬さは、併用群、ラクチュロース投与群のいずれにおいても改善がみられ、特に併用群は開始3週間で100%の参加者が、ラクチュロース投与群では開始4週間で100%の参加者が正常な硬さに

  • 排便時の痛みは、ラクチュロース投与でも軽減されるものの、併用群では有意に、劇的に減少

  • 残便感について、併用群においてのみ改善が確認

  • 腹痛は、併用群においてのみ改善が確認

  • 有害事象は認められなかった

コアギュランス菌とラクチュロースの併用効果は、非常に鮮明に確認され、便秘は劇的に改善しています。追加検証として、投与終了により効果は持続するのか、有害事象は引き続き確認されないのか気になるところではあります。少なくとも、プロバイオティクスの便秘に対する有効性を示した臨床研究です。

以上、Bacillus coagulansとラクチュロースの併用が機能性便秘を改善するというお話でした!

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また次回、お会いしましょう!
本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

Venkataraman, R et al. “Effect of Bacillus coagulans Unique IS2 with Lactulose on Functional Constipation in Adults: a Double-Blind Placebo Controlled Study.” Probiotics and antimicrobial proteins vol. 15,2 (2023): 379-386. doi:10.1007/s12602-021-09855-8

1) Konuray G, Erginkaya Z. Potential Use of Bacillus coagulans in the Food Industry. Foods. 2018 Jun 13;7(6):92. doi: 10.3390/foods7060092. PMID: 29899254; PMCID: PMC6025323.

2) Masanori NAKAJO, Yuuko MORIYAMA, Development of Selective Medium and Counting Method for Heat Resistans Spores of Bacillus coagulan, NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI, 1994, Volume 41, Issue 4, Pages 281-286, Released on J-STAGE April 21, 2009.

3) ラクチュロース、公益財団法人 腸内細菌学会、Access: 2023/03/20,


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