パラスイマー大橋弦樹さんインタビュー

《イントロダクション》

東京2020パラリンピックにおける鈴木孝幸、木村敬一、富田宇宙、山口尚秀 各選手などのメダル獲得でパラ競泳の注目度はがぜん高まった。
大会から1年が経ったいま、集まった注目を生かし、多くのひとが「やる」「見る」の両面でパラ競泳、パラスポーツに親しむ環境の形成につなげたいところ。
そこで筆者はいわゆるメダリスト級のエリートではなく、いわば「等身大」のパラスイマーに話を聞くことにした。
本インタビューを通じて読者の皆様がパラ競泳の世界をより身近に感じ、各地域で活動するパラスイマーを応援するきっかけになれば嬉しく思う。

今回、書面インタビューに応じてくださったのは埼玉県在住の大橋弦樹さん(東京国際大学在学中)。2000年生まれで埼玉県入間郡三芳町出身。
背骨の一部の形成不全に起因する先天性の二分脊椎症のため、下肢に障がいがあり、普段は車いすを使用している。
初めて泳いだのは5歳。中断した時期もあったが、高校時代に誘われて競泳を始めるとたちまちタイム更新の面白さに目覚め、すっかりのめり込んだとのこと。
昨年のパラリンピックを通じて広く知られるようになったが、障がい者スポーツはその程度によってクラス分けがある。パラ競泳も例外ではなく、細かいクラス分けがなされている。
大橋さんの場合、自由形S7・平泳ぎSB7というクラスに属する。
なお、数字が小さいほど障がいの程度は重くなる。

大橋さんはこれまでに第22回全国障害者スポーツ大会25m自由形第2位・同大会50m自由形優勝、第18回全国障害者スポーツ大会25m自由形優勝・同大会50m自由形第2位などの成績を収めている。
大学生活終盤にさしかかった大橋さんに競技歴の振り返りからプライベート、将来の目標まで思うところを記してもらった。

競泳と「推し活」を両輪で楽しむ日々

質問:競技歴を教えてください

水泳は5歳から始めましたが、競技としての水泳は高校3年生からなので競技歴は4年です。
5歳から通っていたスイミングスクールのハンディキャップコースが中学3年生で卒業だったので、その後は水泳から離れていました。
高校3年生になってから、パラ水泳をしている後輩の親御さんに大会の出場を勧められたことと、両親にも「10年間泳いでいたのに大会に出ないともったいないから出てみたら?」と言われ、関東大会に初出場したことが競技を始めたきっかけです。

質問:得意泳法、御自身の強みと課題は?

自由形です。25mと50mのタイムしか計測したことがないのですが、50mのタイムの方が良いです。
以前、コーチに「弦樹くんは肺が大きい」と言われたことがあります。後半が強いです。
スタートが水中スタートなので飛び込む選手に負けないスタートを身につけたいのと、肺活量を活かして泳ぐ距離を伸ばしてみたいです。

質問:学生生活や趣味について教えてください

現在大学生ですが、コロナ禍のため対面授業が減ってしまっていることにより学生生活を楽しめていません。
今注目しているグループは指原莉乃さんがプロデュースされているグループです。
小学校5年生の時にAKB48を推し始めたのですが、中学生になってからは同級生が所属しているグループを応援していました。
その後はGEM、SUPER☆GiRLS、26時のマスカレイド等を通り、乃木坂46にたどり着きました。
なぜ転々としたかは、グループの解散や推しメンの卒業が大きな理由です。
乃木坂46も推しメンの山崎怜奈さんが卒業されてしまい、現在は以前から気になっていた指原莉乃さんプロデュースのグループに落ち着いています。
スマホのゲームやSwitchで遊ぶことも好きです。
最近、運転免許を取得したので「趣味はドライブです」と言えるように頑張ります。

質問:将来の目標を伺えますか?

競技をしていくうちに記録を伸ばすことに集中しすぎて水泳を楽しめない気持ちになることがあります。
なるべく長く競技を続けたいと考えているので、とにかく楽しむことを一番に泳いでいきたいです。
(卒業後の就職については)特に職種は決まっていませんが、バリアフリーの整った快適なオフィスで働いてみたいです。
無事就職をし、推し活を楽しみながら年に一度の日本パラ水泳選手権大会に出場することができればいいです。
なかなか厳しい現状ですが、ジャパンパラ水泳選手権大会にも出場してみたいです。

《むすび》

10月末に行われた「第22回全国障害者スポーツ大会《いちご一会とちぎ大会》」で大橋さんは前述の通りの成績を収め、50m自由形では短水路自己ベストをマークした。大橋さんとしてはラスト7、8mでバテたことが悔しく、ゴール前から涙が出たという。
冒頭で述べたようにパラリンピックメダリストなどのエリートアスリート以外にも大橋さんのように伸び伸びと青春を生きながら、自身の目標をもって競技に取り組むパラアスリートはたくさんいる。また、今回インタビューしてそういうひとが増えて欲しいと思った。
東京2020大会のレガシーとは「やる」「見る」両面でパラ競泳、パラスポーツの裾野が広い社会、各々が身の丈に合ったチャレンジのできる環境の実現だ。

※インタビューを快諾してくださった大橋弦樹さん、御母様の大橋日登美さんに深く感謝します。

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