【公演レビュー】2023年4月9日/角田鋼亮指揮、京都市交響楽団、大萩康司〔ギター〕
超お値打ち価格で音楽の春爛漫
《プログラム》
ミヨー:セゴビアーナ
タレガ:アルハンブラの思い出
(以上ギターソロ)
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
*ソリストアンコール*
ブローヴェル:11月のある日
~休憩~
トゥリーナ:幻想舞曲集作品22
ファリャ:バレエ組曲「三角帽子」第1部&第2部
*アンコール*
ビゼー:「アルルの女」組曲第2番より第4曲「ファランドール」
比較的間近までサイト上のチケット情報は「余裕あり」だったが、訪れてみればソリストの見えないオルガン側以外は9割ほどの入り。
一定の地位と知名度のあるアーティストが揃って2,000円台という物価高を笑い飛ばすお値段。若いひとたちにも来て欲しいと行われている企画だが、若干「老」の目立つ客席だったのは御愛嬌。
大萩康司が優しく伝えた「生の喜び」
若い頃の筆者は大萩康司のギターをよく聴いた。
しなやかにわき立つきめの細かい響き。終演後の気さくな雰囲気、かわいらしいサインも記憶に残る。
こちらの環境の変化で遠ざかってしまい、インストアイベント以外の実演は恐らく15年ぶり。
3列目の席ゆえ、1音1音のメリハリの深さ、それが投げかける陰陽のコントラストの鮮度、いずれも録音では汲み取れない表情が浮かぶ。
とりわけミヨーの「セゴビアーナ」は音源で親しんできた曲ゆえ、1音1音の掘り下げが一段違うことに感銘を受けた。
アンコールはデビューアルバムのタイトル曲。
デビューから20年あまり、爽やかな佇まいは変わらずも奏でる音の奥行きは遥かに増している。ギターの道を力まず誠実に歩むひと。
アランフェス協奏曲、アルハンブラの思い出の録音の登場が待たれる。
堅実にして彩りのきいたサウンドポリシー
角田鋼亮の適度に押し引きをきかせるリードに乗って京都市交響楽団は好演した。
アランフェス協奏曲からチェロ、木管の品を保ちながら艶やかに舞うさまが楽想の魅力をくっきり伝える。
後半のトゥリーナ、ファリャともに緩急や増減の変動の激しい楽想をオーケストラメンバーは難しさのなかでどこか愉しげに奏でた。弦の量感も十分。
時折腰の重くなる瞬間があったとはいえ、総じてサウンドの躍動性、澄んだ質感をキープしたのは立派の一語。
ベートーヴェン/ブルックナー/ブラームス/チャイコフスキーあたりのイメイジの強い朝比奈隆(1908~2001)は、晩年のインタビューで「ファリャなんて最近やっていないし、アルベニスなんかにもいいものがたくさんある」と語った。
えらくなると気恥ずかしくなるのか、この種の音楽を止める指揮者が多いし、実際朝比奈隆にも指揮の機会は訪れずじまい。その代わり(?)北欧のグリーグの「ペールギュント」組曲を「南海コンサート」で取り上げた。
有名な割にきちんと生で聴けることは意外と少ない「三角帽子」の組曲を聴きながらそんなことをふと思った。
※文中敬称略※
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?