33年前のホンダF1エンジン5連勝【1988年カナダGP】

2021年F1世界選手権第9戦(7月4日)でレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが2位のメルセデスのボッタスに15秒以上の差をつける完勝。ホンダエンジン搭載車の5連勝はマクラーレン・ホンダのアイルトン・セナが1988年の第5戦カナダグランプリを制して以来。
現在形の快進撃はもうあちこちで報じられているので本稿は33年前のレースを取り上げる。


1988年第5戦カナダグランプリ(6月12日、ジル・ヴィルヌーヴサーキット)

マクラーレン・ホンダに乗るセナとプロストが初めてバトルを演じたレース。後に生じる確執の芽はまだ感じられず、至ってクリーンな攻防戦が展開する。周回遅れを処理するセナの抜群の判断力が冴えた。

1988年は1,500ccターボエンジン(過給圧2.5バール、燃料タンク容量150リッターに制限)と3,500cc自然吸気が混走する最後の年で翌1989年からは後者に統一されることに決まっていた。従って移行期のシーズンにどう臨むか、チーム毎に対応が分かれた。
ホンダに切られたウィリアムズ、フォードTECターボを諦めたベネトンはどちらも自然吸気エンジンのマシン、ウィリアムズFW12・ジャッド、ベネトンB188・フォードDFRを製作した。
またジョン・バーナードを迎えたフェラーリは前年の改良型のターボカーF187/88Cで戦いつつ、来年用のクルマの開発を進めた。

そしてマクラーレンはいわば1年だけのために本気のクルマを作る。
奇才ゴードン・マレーが過去の自作ブラバムBT55のコンセプトを生かしたローラインのMP4/4をデザイン、シャシー設計に合わせたワイズマンの3軸ギアボックス、ホンダのRA168Eエンジンが用意された。
シャシー、速さと燃費を両立したエンジンの高い総合力にセナ、プロストの卓越したドライヴィングが加わって開幕から他チームを寄せ付けない戦いぶりで連勝していく。結局開幕11連勝、16戦中15勝という記録的圧勝だった。

このカナダではベネトン・フォードのブーツェンが健闘して3位表彰台を獲得。
まだ勝ちにいく戦闘力、オーガナイズ力はなかったが、以降のレースも入賞を重ね、マクラーレンと同じホンダエンジンを積みながらシャシーバランスに苦しむロータスをしのぎ、「その他大勢」から抜け出しマクラーレン、フェラーリに次ぐ存在まで駆け上がった。
そして古豪のロータスは一気にトップチームから転がり落ち、6年後には消滅する。

「過渡期の本気」で勝ち込めるか

2021年のF1もレギュレーション変更の話が飛び交う状況でいわば過渡期と言える。
近年常勝を誇ったメルセデスは先を見据え、今シーズンの開発を手控えているという噂もあるなか、2021年で参戦終了するホンダは来年向けの技術を前倒し投入、もちろんレッドブルのシャシーも一段と進歩、文字通り必勝のクルマ作りを図った。ここまでのところ概ね順調に勝利、ポイントを積み重ねている。とはいえ勝負の8月、9月にむかってまだひと波乱、ふた波乱あるだろう。実りの秋が迎えられるかはここからが正念場。


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