【巨匠への道程】ピアニスト阪田知樹

2021エリザベート王妃国際音楽コンクール(ブリュッセル)ピアノ部門ファイナリスト(計6人)に選ばれた2人の日本人ピアニスト、務川慧悟と阪田知樹。前回投稿の務川慧悟に続いて今回は阪田知樹を取り上げる。

阪田知樹は現代の日本においてほぼ唯一巨匠まで至る可能性を持つ男性ピアニスト。

作品の成り立ちの細部まで読み解く知性、その成果を明晰かつ強靭に描き抜き、1音1音が連なり合う稜線の深い音楽に結実させるテクニック、光と翳を映し出す色彩感覚の鋭さ・・・技と聴衆の受ける感銘の双方において高い水準を満たす、まさに巨匠の器である。しかも圧倒してやろうとか、これ見よがしに仕掛けるといった要素は皆無であくまで音楽自体が語る、作品の魅力の核心を真正に聴き手まで届けるスタンスなのがひときわ輝かしい。

往年の名手たちの録音を聴くことも大事にする阪田知樹は作曲やトランスクリプションに取り組み、先人たちに匹敵する成果を既に挙げている。また阪田知樹の演奏全体の骨格は現代の洗練を感じるが時折ゾクッとする艶を覗かせたり、始める前にインプロヴィゼーションを弾くケースがあり、そこにヒストリカル録音からの精神的連続性を想起させる。引き出しが多く、創造性豊かで聴くたびにもっと聴きたくなるピアニスト。

2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクール(ハンガリー・ブダペスト)第1位など華やかなコンクール優勝歴を誇る阪田知樹が気持ちも新たに挑むエリザベート王妃国際音楽コンクールのファイナルは日本時間5月26日午前3:10から始まる。

こちらの公式サイトでライヴ配信並びにここまでの演奏を視聴可能。

【追記】阪田知樹は4位入賞だった。

※文中敬称略

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