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「本書はインタビュー集である。」

三浦しをん著 『ふむふむ おしえて、お仕事!』(新潮社、2015)

インタビュー集、というものを読んだことがなかった気がする。
エッセイ集とか、短編集とかはあるけれど、インタビューというと、たいてい新聞や雑誌、ネット記事にあがっていて、それが本になるのは珍しい気が…… 珍しいよね?
少なくともわたしの周りでは。

この本は、作家の三浦しをんさんが、特殊な職業についている女性にインタビューして、それをまとめたものだ。
しをんさんの作品を読むと、仕事に一心に打ち込む人の物語が多くあることから、きっとこれまでもたくさんの人にインタビューをしたり、取材をしたりしてきたんだと思う。
作家というのは、それくらい「他人のしていること」に興味を持って、それを掘り下げていく好奇心がないとできないんだろうな、と思うほどに。

この本に出てくるのは、「靴職人」や「染織家」といった”職人”らしさがわかりやすい人や、「ウェイトリフティング選手」のようなアスリートまで、さまざまだ。
そういった、方向性の全然違う人たちの話を聞きながら、どんどんマニアックな領域に踏み込んで話を進めていくしをんさんは、すごい。
途中で集中力が切れないのだろうか、訳がわからなくなって、興味を失ったりしないのだろうか。
きっと「訳がわからない」ところに食いついていけるから、これだけインタビューができたんだろうなぁ。

そうして、全然方向性が違う専門家たちの話を聞いていくと、それぞれのこだわりっぷりというか、マニアックぶりというか、そういうのが分野をこえて共通している気がする。
やっぱり何かの「技能」で仕事をするひとは、そのことにオタクじゃないとできないんだろうな。
ものすごくそんな気がする。
そしてオタクはオタクの話を聞くのが好きである。
よくわからなくても、相手が生き生きと早口で捲し立てるのを聞いていると、元気が出てくる。
このインタビュー集を楽しくにやにやと読めたわたしも、ある種のオタクなんでしょうねぇ。
それなりの自覚はある。

三浦しをんさんの文章は読んでいて心地よく、流れるようなので、こういうインタビュー集がまた出ないかな、とちょっと期待している。
自分の知らない深淵を覗くのはとても楽しいので。

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