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「白刃が、昼の光を照り返し、銀色の甲冑が、固くかわいた音を立てる。」

スレイヤーズ長編第3巻にやってまいりました。
アニメシリーズの一期が1巻と3巻がメインだったので、3巻が終わると「ひと段落ついたな」という気持ちになります。

神坂一著『サイラーグの妖魔(スレイヤーズ3)』(富士見書房、2008年)

…… ねえ、懺悔していいですか?
いま現在「スレイヤーズ」の展開をしているのが角川書店なもので、てっきりこれもそうだと思っていたんですが、この新装版が出た当時はまだ「富士見書房」だったんです???
いま16巻確認したら、「KADOKAWA」の「富士見ファンタジア文庫」だったんですよ。
え、富士見書房ってもともと角川ではなかったのね?いつの間に吸収されたん???
(全方面に大変申し訳ありません。)

と、いうわけで、この当時は富士見書房でした。
もちろん、1991年出版の旧版も富士見ファンタジア文庫ですよ。ファンタジア文庫は優秀なレーベルですよね。

さて、シリーズものの第3巻ですが。
スレイヤーズシリーズにおける神坂先生のすごいところは、「パワーインフレを起こさずに主人公を苦戦させる」という点にあると、これまで書いてきました。
もともとレベル100の主人公に対し、1巻は「必殺技が敵に通用しない」、2巻は「街中フィールドで派手な技が使えない」と「敵が社会的地位のある人間なので吹っ飛ばしにくい」という手法で、リナをパワーダウンしてきました。
3巻は「こちらの攻撃で回復する敵」をどう倒すか、というのがポイントになります。

ところで、2巻は「敵が社会的地位のある人間」と書きましたが、よく考えたら1巻も3巻もそうでした。そして4巻以降も、結構そういうところがあります。
地位と人望のある人間が、裏で碌でもないことをしているというのは、物語世界の様式美ですね。
3巻ではそれが顕著に出ていて、リナとガウリイは敵に賞金をかけられ、「自称正義の味方」に追い回されています。
首謀者をぶちのめそうと、たどり着いた先にいたのは……

このシリーズのもう一つの強み(そしてラノベの特徴)ともいえるのが、キャラクターの魅力です。
3巻は新規キャラのシルフィール、1巻から再登場のゼルガディス、2巻から再登場のランツ、と、リナとガウリイ以外との連携や掛け合いも楽しくて、見どころが多くなっています。
ランツ君はちょっとだけ強い普通の人、だったので、アニメでは出してもらえませんでしたが、「力のない普通の人」の働きによって戦局がかわってくる、というのはバトルものの面白さです。
ガウリイ一筋の美人神官シルフィールは、RPGでいうところの回復役(攻撃力はカス)。一応、恋愛面におけるリナのライバル的な立ち位置にいるはずですが、リナもガウリイもそっち方面はからっきしなので、暖簾に腕押し状態。それがシルフィールのいいところなんだ……
そして、1巻で敵として登場して最後は共闘した、「残酷な魔剣士」ゼルガディス。登場回数を重ねるたびに、お茶目属性と不憫属性がマシマシになっていく彼ですが、さすがCV緑川光ですよ。かっこいい。そして強い。味方にいるととても安心する。

目的も、思惑も、得意分野も異なる人たちが、手を組んで共闘するのは、「友達」とか「仲間」とは少し違う信頼感を垣間見ることができて、これはこれでいいものだな、と思います。
こう書いていて気がつきましたが、第一部(1〜8巻)も登場人物の関係性は思った以上にドライです。アニメでの「仲良し四人組」のイメージが強いせいで、第二部(9〜15巻)のサバサバした人間関係と対比させがちですが、スレイヤーズはそんなにウェットな関係性を構築しないんだったな。

ところで、冒頭の一文は、リナに吹っ飛ばされる予定の「自称正義の味方」の騎士団の描写なのですが、これが物語全体にどう影響しているのかな…… と考えて、答えが出ませんでした。
いうなれば、「身も蓋もない」を体現している、とか……?
だって吹っ飛ばされるだけだし……?

本の枕は本の内容をそれなりに表す、と思っているのですが、これは難しいですね。
だれかいい解釈を知っていたら、教えてください。


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