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「エドガー・アラン・ポーが「モルグ街の殺人」を発表したのは、1841年のことである。」

うん。
あの。

何度も言っているように、わたしはミステリの「なんかおもしろかった」感は覚えていてもトリックは覚えていない派なので。
なので、本書を読むにあたって、「さて、そんな話だったっけ」というものが少し。
残りは「名前だけは存じ上げておりますが」と「残念ながらいままでご縁がありませんでしたね」ばかりである。

有栖川有栖著『有栖川有栖の密室大図鑑』(創元社、2019年)

まだ読んだことのない名作のネタバレを読んだわけだが、周知の通りわたしすぐ忘れるので……
本書は海外編と国内編に分かれているが、わたしの愛読する篠田真由美先生の建築ミステリは入っていなかった。
残念。
そしてもちろん名前だけは知っている大御所が名を連ねている。
このあたりから一つ選んで読むのもいいかもしれない。

「密室」といえば、本格推理の花形。
もう現場が「密室」だったというだけでわくわくしてしまう。
それが密室の魅力。
密室に対して、「そんなん犯人がわかればどうでもいいじゃん」とか言ってはいけない。
というか、密室の謎を解かずして犯人がわかるものは、もはや密室ものではない。

そう考えると、推理小説家というのは本当に大変な稼業だと思う。
トリックを考えるだけではなく、「この人しかこのトリックを使えなかった」という、容疑者のアリバイを作りつつ、そしてそう簡単に見抜かれてはいけないのだから。
ほんと、頭いいなぁ。

この本の良いところは、物語の核となる「密室」がどのような点でユニークであるかを紹介するとともに、実際の見取り図がついていることだ。
こちらの絵は磯田和一氏による。
ミステリとは関係なく、間取り図を愛好する人にとっても、この本は魅力的だ。
密室もので使われる部屋は、大抵の場合、家主が趣向を凝らした建物の一室だったりするから、普通の賃貸の見取り図を見るのより数倍おもしろいし、数倍実用的でないところがある。
そんなところも、密室ものの楽しみの一ひとつだろう。

さて、ほとんど読んだことのない本を紹介する本を紹介するというのもなんだか変な感じがするが、密室を愛する人、建物を愛する人は、読んで損のない本であることは、十分うけあえる。
どうぞお楽しみください。

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