見出し画像

「一人で食べる贅沢、というのがあります。」

もうね、この本読んでるとまずはお米を炊きたくなるのよ。

小林カツ代著 『実践 料理のへそ!』(文藝春秋、2003)

だってね、この節のタイトルが、「ご飯に塩だけの贅沢」ですよ。
もう食べたくて仕方がないじゃないですか。

料理本というものにはいろいろな種類がありまして、写真多めのレシピ本(最近のは動画が見れるQRコードとかついてますよね)、写真少なめのレシピ本、マジで写真のないレシピ本(洋書あるある)、料理エッセイ、そのた、と枚挙にいとまがありません。

わたしはその中で、料理エッセイといいますか、料理人が料理について語っている本がとても好きです。
好きな料理、好きな食べ物について語っているうちに、いつの間にか作り方まで地の文で説明してしまっているような、そういう本が大好きです。
作り方、や材料、なんて項目はどこにもなくて、まるでいま作っているのを実況しているかのように、文章の中で料理が出来上がっていくのがたまりません。
美味しそう。
食べたい。
食べたい。
食べさせろ(自分でつくろうね)。

そして小林カツ代さん。
さすが小林カツ代さんとしか言いようがない。
だって初っ端に、炊き立てご飯の一番上をすくってお茶碗にもり、その上に塩をかけるだけ、というシンプルな一品を、「なにがなんでもいますぐ食べたい」最高の食事にしてしまうのですから。
いやほんと、炊き立てご飯に塩は正義。

この、一人でしか味わえない贅沢を、惜しげもなく晒してくれる料理家。
本当に信頼できます。
その時のシチュエーションも含めて、なにが一番美味しいか、をわかっている。
素晴らしいじゃないですか。

一人炊き立て塩ごはんの美味しさは、一人だから成立すると思います。
これが、誰かと一緒の食事では、ただの「侘しい飯(以下)」じゃありませんか。

ひとりだからこそ、「炊き立てごはんに塩」が最高に美味しい食事になるのです。

ほんとすごい。

カツ代さんにまんまと乗せられたわたしは、たまに「塩ごはん」を堪能してはニンマリしています。
あとはあれ、「お米がおいしい」で評判のお店なんかにいくと、必ず「お塩ください」と頼みます。
そこで給仕人が「?」というような顔をするような店は、パチもんです。
こころえました、とばかりに颯爽と塩を盛った皿を出してくるお店こそ至高。
ちゃんと、「おこめとしお」の大切さをわかっている店だな、と嬉しくなります。

わたしがこの本のなかで、「食べたい!のに作れない!」と長年なっているのは、「そうめんのつゆ」です。
曰く、そうめんは製麺のときに油を使うので、めんつゆにも油分があったほうが馴染みやすくおいしい。
そこで、出汁のよく出る干しエビを入れる、というもの。
あぁ〜〜〜〜美味しそう!
夏の暑さと切子ガラスの涼やかさが相まって、そうめんがいっそう美味しそうに引き立っています。
なんで作れないかって、うちの家族がエビアレルギーだからです。
かなしい。
これもひとりごはんで楽しむしかないでしょうか。
いやでも、一人ぶんのめんつゆって難しすぎません?
そうめんは何人かで食べた方が美味しいんですよね。

こんな感じで、料理家の料理愛が詰め込まれた本は、レシピ本よりよっぽど食欲をそそります。
うん、書いてたら白米食べたくなってきた。
白米食べよう、そうしよう。


放っておいても好きなものを紹介しますが、サポートしていただけるともっと喜んで好きなものを推させていただきます。 ぜひわたしのことも推してください!