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舞台制作というお仕事

初めに

2022年9月4日
伊東和哉 HALL ONE MAN LIVE 2022 inspire

シンガーソングライターの伊東和哉さん
彼のワンマンライブで舞台監督を務めました。
私は現職が映像制作を行なっておりますが、長らく音響や音楽の世界におり会場となった郡山文化センター中ホールも馴染みの場所でした。

7月中旬、伊東さんから連絡が入り「舞台監督をやって欲しい」と言われた時はとても光栄に思ったと同時に、自分に務まるだろうか?ととても心配になりました。
今まで、専門学校の講師として何回も舞台制作を見守り指導をしていた経験は確かにありました。
書類の書き方や誰のところに情報を伝えなければならないか?などとても神経を使う仕事で、自分にちゃんとこなせるだろうか?と思ったからです。

舞台での役割

舞台で必要な役割は
・舞台監督
・制作さん
・音響さん
・音響の舞台さん(付随してアーティストのケアや情報伝達をする「アーティスト付き」という仕事もあります。立ち位置的には制作に近いかもですが)
・照明さん(ピンスポット含む)

イベントの規模によって人数は変わるので正解はないのですがおおむね
舞台監督1名
制作1~2名
音響オペレーター1名
音響舞台1~2名
アーティスト付き1~2名
照明1~2名、ピンスポット1名などが大体かなと思います。
その他に、小屋付きと言って会館職員もしくは会館の委託業者が必ずいます。
ライブハウスなどはハコと言うかもしれませんが、会館、ホールなどの舞台施設を小屋(コヤ)と呼んでいる気がします。
*調べてみたら「小屋」というのは少なからず蔑称に近いという記事を発見しました。あまりそういう意識はなかったですが、そう感じる人もいるかもしれません。

そして舞台制作というのは、各セクション(音響、照明、舞台etc…)に確実にチーフがいます。
舞台制作において、チーフをすっ飛ばして実働する人とだけ情報共有するのはご法度で、チーフに話を通してチーフから伝えてもらうという縦社会なのです。

ちなみに、イベント全体のことはこの記事では省きます。
本来であれば、受付・チケットモギリ・警備・救護など色々なことを考えなければならず、そちらはプロデューサーが考え指揮するところになるため、今回の舞台制作とは別枠になります。
ですので、今回は単純に「舞台を作る」ということに焦点をあてます。

舞台監督

今回伊東さんに任された舞台監督という仕事は、舞台の進行を滞りなく進める責任者になります。
ですので、照明や音響その他舞台に関係のある書類の作成と収集、まとめ全体への発信が主な仕事になります。

資料

全体で必要なもの
・タイムスケジュール(進行表含む)
・舞台平面図
・香盤表
・進行台本
・出演者のリスト(最近は新型コロナ感染拡大防止の一環として、出演者や出入りする人のリストを作成する必要がある)
・セットリスト(曲順やMCがどのタイミングで入るかが書かれているデータもしくは紙)
・必要に応じて楽譜や歌詞表などがある

セクション別に必要なもの(舞台監督は全て必要になります)
音響班
・回線表
・ブロック図
・平面図

照明班
・照明の仕込み図

以上になります。

舞台監督作成資料

まずは舞台平面図の作成になります。

実際に作成した平面図

舞台平面図は、各文化センターのホームページから資料としてダウンロード可能です。
私が作成した舞台平面図は、舞台のどの場所に何の楽器が来るか?を示しております。
これを作成するにあたり、ドラムの点数(太鼓やシンバルの数)を聞いたり、ゲストの立ち位置を伊東さんと打ち合わせしました。
そして、平台と箱馬(もしくは開き足)の数を、会館さんや委託業者の方がたと話をし、「このくらいの高さでこのくらいのスペース」というのをすり合わせしていきます。
私が先に作成したものはドラム台やピアノ台、そこにベースアンプやギターアンプ、伊東さんの立ち位置などおおよその位置で記入していきます。
あとは、高さを会館さん委託さんと話する程度でした。

また、今回は引割幕3のところで幕を閉じ切ってステージの半分だけ使用というこを言われていたので、幕を伸ばしてあります。
この舞台平面図がたたき台になります。

平面図を作り終えたところで、スケジュールも作成していきます。

第2案スケジュール

第1案スケジュールは開演後の動きが記載されていない状態の物です。
初めての場合は、音響さんや照明さんに仕込みの時間を聞くといいです。
今回は、このくらいだろうという想定で作りました。
ちなみに、最終のスケジュールでは、音響さんのお昼時間が1時間から30分に短縮されてます。
当日仕込み当日本番としてはかなりタイトなスケジュールです。
リハーサルはできず、サウンドチェックのみ+場当たり(**出ハケの確認)だけです。
**出ハケ(ではけ)=ステージに出ることを出る、ステージからいなくなることをハケると言います。

このスケジュールと平面図が出来上がった時点で、音響さん照明さんにデータをお渡しします。
お渡ししたデータに追記していただくような形でも良いですし、別に作成いただいた資料でも構いませんが、回収するようにします。
会館と最終の打ち合わせをするときに必要になります。

制作

あと、今回は制作を1/4程度させていただいたので、その話もします。
制作さんは、楽屋周りやケータリング(飲み物やお弁当)の手配その他アーティストが必要なことを先回りやっておく仕事になります。

例えば、ゴミ袋の設置、どの楽屋に誰が入るのかを掲示する、ステージドリンクの手配受け取りetc…
沢山の仕事があります。

今回は私は、楽屋周りのゴミ袋の設置やティッシュ、ウェットティッシュの設置まではこなしておきました。
本当であれば、姿見がちゃんとあるかなどの確認もすべきなのですが、余力がありませんでした。
また、いつもお世話になっている方も来て制作と受付周りを担当するとのことでしたので、その人と連携しながら進めました。

音響

音響さんは、音に関することを一手に引き受けております。
受付入り口で音が鳴っているのも音響さんが会館さんに音声を渡してあるからできるのです。
音響さんの準備としては、メインスピーカーを何にするか?マイクの本数をどうするか?何の楽器が来るかなどイベントの内容によって適切な機材を選定し、平面図に落とし込むところからになります。

今回音響には仙台のGROOVE COUNCILさんが来てくださいました。
オペレーター1人ステージ2人という体制で来ていただきました。
私がいただいた資料としては、回線表とステージ平面図になります。

平面図には、メインスピーカーの位置だけではなく、各演奏者用のモニター一なども記載していただきました。
厳密にこなそうと思うと、マイクの位置や何のマイクがそこにいくかまで記載しないといけなくなりますが、狭いところに書くことになるので省略しても大丈夫です。

菅井も音響を10年くらいやっておりましたので、回線表を見ればどのようなマイクがどこにいくかは想像できました。

もし、音響に少しでも興味があればUdemyの音響コースを開設しておりますのでご覧ください。

照明

照明は演出上の光だけではなく、客席のあかりなども担当する重要なセクションです。
今回は、郡山市の株式会社アール・ケー・ビーさんが来てくださいました。
オペレータさん1人、ピンスポ1人、ステージ1人でした。
どこに何の照明を入れるかどのようにステージを照らすと魅力的に見えるかを行なっていただきました。
この曲は青をメインになど曲調や出演者の要望に合わせて色味を整えていきます。
もちろんスポットライトも必要に応じて使用していきます。

今回は、照明の仕込み図だけいただきました。
それだけで十分でした。

照明は基本上部から下部に向かって当てますので、バトンと呼ばれる棒状の吊り込み機構に設置していきます。

この吊り込みが終わらないと、ステージは何もできません。
ですので、一番最初に照明さんに吊り込みをしていただく必要があります。

本番当日

本番当日は上の写真のように吊り込みをしていただきました。
それと同時に私は、バミリをしていきます。

ドラム台のバミリ

養生テープと油性マーカーでどこに何が来るかを決めていきます。
時間がない中で行なったので、照明チームが吊り込みをしている下でバミリをしていきます。
照明さんが吊り込み終わったら箱馬と平台でドラム台、ピアノ台を作っていきます。

中央にある木の箱が箱馬です

本当に人も時間もなかったので、平台の設置や楽器設置は私と会館の方々と行いました。
なので、平台設置しているところは写真に撮れていません。

ドラム台、ピアノ台の設置が終わりアーティストさんに楽器の設置をしていただきました。

舞台上の設置が終わったところ

客席からステージに向かって撮影したところになります。
おおむね、本番の位置になっております。
ステージには、スピーカーやモニター、楽器、アンプ、マイク、横からの照明などなど見えるかと思います。

今回、音響さんと照明さんは客席からのオペレートになりました。ここまで行けば、何とかなりそうです。
本当に一人ではできない仕事です。
音響さん、照明さん、会館さん、制作さん、アーティストさん、そして舞台監督がいて成り立ちました。

私の細々仕事としては、出ハケのバミリも実はしてました。

養生テープと蓄光テープを使用した出ハケの方向がわかるようのバミリになります。
蓄光テープ高いですね。
1.5Mで600円程度でした。
ここ以外には、ドラム台の階段部分にも設置しました。

アンコールの2曲目で、バンドメンバーが伊東さんにサプライズのバースデーケーキを持っていくところは、袖からみていてかなりぐっときました。

バースデーケーキのファーストバイトしてもらう伊東さん

舞台監督として袖で何をしていたかというと、照明さん、音響さんへのキューだし、次が何が起こるかを伝えたりしていました。
最大の仕事は、時間計算です。
今回17時に演奏終了がマストだったので、ずっと時間計算していました。
なので、途中伊東さんがステージからハケてきた段階で、「何分押してます。」「じゃあ、この曲削ります。」のようなやりとりがありました。

余談

実は今回影アナをCDから流していただいたのですが、声は私が担当しました。
こうやって自分の声を本番で使用するのは初めてでした。

本番終了後

終わったら撤収にはなるのですが、仕込みとは逆の手順でバラしていきます。
初めに楽器やマイクからバラし、その後平台や箱馬、最後に釣り込んだ照明機器になります。
また、同時進行で、楽屋周りの撤収も始まります。
いるものいらない物など分別しながら進んでいきます。
出たゴミは基本自分たちで持ち帰りです。
なので、ここでどれだけ分別できているかは重要になります。

と、舞台を制作するのは大変時間も労力もかかる仕事で、音響さんや照明さんと言ったテクニカルエンジニアの方々がいないと成り立たない仕事です。

ですが、これは何のために行うか?と問われたらアーティストとお客さんのために行う仕事になります。
アーティストが自己表現の場として必要だし、アーティストを支えるお客さんの場所として必要不可欠な場所です。
アーティストとお客さんが満足していただければ裏方としては、成功だったと思います。

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