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【干支水滴 卯】の道行#4「手で考える形」

こんにちは。上出惠悟です。

私たち上出長右衛門窯は毎年5月に窯まつりを開催していますが、今年10月に初めて轆轤(ろくろ)まつりを開催します。轆轤師とその技術はいわば九谷焼を支える縁の下の力持ち。どんなに優れた素地を作っても、そこに絵付を施せば絵付師の作品として世に出てしまいます。河田が生前嘆いていたことでもありますが、これでは轆轤師は育ちません。また一般の皆様には轆轤挽きと型物の器の区別も判りにくいのではないかと思います。

そこで今回、轆轤にきちんと光を当て、その道具と技術を祝おうと新たなお祭りを行うことを決めたのです。第一回目なのでまだ大きな広がりは作れないとは思いますが、業界に小さな一石を投じることが出来ればと考えています。轆轤とは何なのか。轆轤師の仕事とは何なのか。人力から電動に変わっても廻り続ける轆轤の可能性を皆様と一緒に考えるきっかけになればと思います。ここでチャレンジするのは以下の2点です。

・新しい価値をつくる

轆轤まつりはもちろん轆轤が主役。絵付前の白い素地とは違う、轆轤が主で絵付が従となる器(絵付のないものも多くあります)をつくりたい。絵付に比類する価値を生み出したいので、矢張りそこには工夫が必要です。手先でつくる工夫もですが、いつもとは表情の違う釉薬をつくりたいと考えました。長右衛門窯はこれまで釉薬を製造したことがありませんので、そのノウハウはありません。私も柴田も陶芸の専門的な教育を全く受けてはいませんが、長右衛門窯の轆轤場には地元能美市の九谷焼技術研修所を卒業し、昨年入社したばかりの林優花がいます。林は少なからず釉薬を自作した経験があった為、柴田と一緒に栗灰釉、瑠璃釉、マンガン釉、天目釉など4種類の素敵な釉薬を完成させました。

栗の木を燃やして釉薬をつくりました

・私(上出)が直接デザインしない

道行でご覧いただいている通り、これまでの長右衛門窯の新作は、ほぼ全て私がデザインとディレクションを行い、職人と一緒にものづくりを行っています。机の上で私が考え絵に描いて、そのコンセプトや思いを職人に伝える形です。しかし、私は画家としての経験から「手を動かして考える」ことが大事であり、それが説得力のある形を生むと信じています。私が私自身のデザイン手法を否定する訳ではないのですが、定番の笛吹の湯呑は図面に引かれたものではなく、河田が轆轤を廻しながら作った形です。また今後も製品のデザインを0から10まで私が全て行うのは限界がありますし、私が全て行う必要もないのです。

林優花

現在、柴田と林が轆轤まつりに向けて轆轤を廻し新しい器作りに励んでいます。これまでの轆轤師の仕事は、絵付師にパスを回す為の素地作りでしたので、「果たしてこれが売れるのか?」という最終的な責任をあまり感じて来なかったのかもしれません。くるくると廻る独楽(コマ)のように独立独歩し「皆が皆、廻る」、これが轆轤まつりのテーマになりそうです。

はてさてどうなることか、是非轆轤まつりを楽しみにしていてください。現在入場チケット発売中です。今回商品のオンライン販売は行いません。

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上出長右衛門窯の道行

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