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マンガ家の篠丸のどかさんに聞いてみた2/3「妄想企画・篠丸さんがファンとやりたいこと」

こんにちは。「ちょど研」研究員の巣内です。
前回は篠丸さんの好きなものなど、パーソナルな視点から色々探っていきました。

 ここからは、いよいよ「マンガ家・篠丸のどかさん」の話。
篠丸さんとファンの距離感を探っていきます。アホウドリの回で取材させて頂いた大石真理子さんも交えて(お二人は学生時代からのご友人)、3人でお話ししていきたいと思います。

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ユーザーの呼び名

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巣内 ブランドのユーザーは、「お客様、ファン、ユーザー」と呼び名はブランドごとに様々ですが 篠丸さんは何と呼んでいますか?

篠丸 読者の方。もしくは、ファンの方、ですかね。

巣内 当たり前のことだから難しいかもしれないですけど、そう呼ばれてる理由はなんですか?

篠丸 それ以外に呼び名があんまりないというのと、編集さんと話していても「読者の方」って言うからですかね。個人的には、ファンの方だけに向けて描いているわけじゃなくて、幅広い方に読んでもらいたいので、「ファン」よりは「読者の方」の方がしっくりくるかなぁ。

巣内 お知り合いの作家さんで、ファンクラブを持っているマンガ家さんっていらっしゃいますか?

篠丸 pixivFANBOXみたいな場所で、制作秘話とか、なかなか見れない作者のプライベートが知れる、みたいなのを活用してる方はいますね。月額制とかで。そういうのは、プロの方だけじゃなくて、趣味で絵を描いてる方でファンが付いているような方も、使ってます。

巣内 同人文化のネット版、みたいな感じなんですね。日本の同人文化は面白いなと思っていて、これがカルチャーの下支えなんだろうなと思う時があります。上手い人の真似をする、ということが。お金儲けじゃなくて、好きだからやっている、同好会みたいなものですしね。


篠丸さんのファン(読者)

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巣内 篠丸さんの読者の方は、どういう方がいらっしゃいますか?

篠丸 サイン会とか、お手紙をいただくことでしかわからないんですけど、『うどんの国』の時は、7割くらいが女性でした。みんな優しいんです。だって、香川でサイン会をした時も、わざわざ東京とかから来てくれて、「いつも読んでます」とか「好きです」とか言ってくれるなんて、神様みたいだと思ってるんです。

巣内 サイン会やお手紙以外で、読者の方の反応を知る機会はあるんですか?

篠丸 雑誌連載だと、反応があんまりわからないんですよ。ウェブ連載だと、コメントいただけるんですけど。雑誌って、アンケートはがきをわざわざ編集部に出す、というハードルの高さがあって。でも、Twitterとかで、読者の方の反応とかを見かけると、本当に心の支えです。「誰か読んでる人いるのかな」って思いながら描いてるので…。

巣内 読者の方とのやりとりで、嬉しかったことってありますか?

篠丸 お手紙をいただくのは、めっちゃ嬉しいですね。『うどんの国』をやってる時は、忙しくてお返事を書けなかったんですけど、ダンボールにずっと保管してて、心が傷ついた時とかに読み返して、何とか自我を保ってました!

巣内 描き続けていくための燃料なんですね。

篠丸 お手紙って、実はすごく面倒なんですよね。今は、Twitterとかでメッセージを送ることもできるじゃないですか。でも、わざわざ手書きしたものを編集部に送ってくれて、そこから私に転送されてというプロセスが特別ではありますね、手紙は。

巣内 マンガ家さんって、仕事の仕方として孤独になりがちなんですか?

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篠丸 ほんとそうです。どうしてもネガティブになりがちで。『うどんの国』でも、アニメ化も決まって一番軌道に乗っているような時に、実はすごく病んでいてたんです。「もう連載をやめたいです」みたいなことを出版社に打診したくらいで。でも、出版社の方に、「この作品はあなたのものでもあるけど、読者のものでもあるんですよ」ということを言われて、グサッと来たんですよね。応援してくれている人たちによって成り立っているんだから、きちんと向き合わないといけないって。

巣内 本当に、読者の方の存在が支えなんですね。みなさん、篠丸さんにぜひお手紙を送ってください(笑)。

篠丸 もう本当に嬉しいんですよ! 季節の折ごとに「お元気ですか?」って手紙をくれる方もいるし。

巣内 Twitterのお話も先ほど出ましたが、Twitterでファンの方と接する時に気をつけていることはありますか?

篠丸 上手に活用はできていないんですけど…リプをいただいたら、できるだけお返事返すようにはしてます。でも、私の個人的な考えなんですけど、漫画家本人の私生活が透けて見え過ぎてしまうのは、どうなのかなとも思うんです。作品を読んでいても、情報として頭をよぎってしまうんじゃないかとか…だから自制しているところはあります。

巣内 確かに、篠丸さんのアカウントを見せていただいても、作品の話とかが多くて、自身のお話はあまりされないですよね。

篠丸 こういうインタビューとかでは話すんですけど、Twitterとかで、この服が好きとかは発信してないかも。何が好きでどんな人なのか、というのはあまりわからないと思います。自分のことを発信するのが苦手なんですよね…コミュ障なんで(笑)。

ファンとやりたいこと・妄想企画会議


巣内 篠丸さんと読者の方との関係が、少しずつ見えてきました。ここからは妄想企画会議ということで、PR視点で篠丸さんがファンとやりたいことをヒアリングさせて頂いて、妄想PR企画を作ろうというコーナーのスタートです。ご友人の大石真理子さんにもご登場いただいて、ぜひワイワイとコメント頂けたらと思います!

大石 よろしくお願いしますー!

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企画前の前段整理

巣内 「作家さん個人としてのPR企画」という建て付けで良いでしょうか?

篠丸 はい!

巣内 出版社さんとの契約の関係で、個人でできるPR活動にも、できることとできないことのガイドラインがあると思うのですが、まずそこを整理させていただいてよろしいでしょうか?

篠丸 やっぱり、作品が関わると難しくなります。連載中の作品が絡んでくると基本は出版社と応相談という形になると思います。できることできないことも出版社によってちがうので。

巣内 そうしたら、新作の販促活動を作家さん自身が企画してやる、というのは難しいことなんですかね?

篠丸 イラストを描いてSNSとかにアップして、利益が発生しないのならOKだと思います。キャラクターの絵を描いて販売する、というのを連載中にやるのは、応相談だと思います。

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巣内 なるほど。大筋として連載した&連載中のマンガを絡めない企画を考えた方が良さそうですね。この条件で、読者の方とやりたいこと、課題に思っていることはありますか?

篠丸 例えば、電子書籍って、書店でふらっと見かけて偶然手に取る、みたいな偶然の機会が少ないですよね。だから、もっとたくさんの人に目に触れる機会がほしいなとは思います。例えば、Twitterとかでイラストをたくさん描いて、その絵をきっかけ漫画に行き着く、という流れを目指したことはあったんですけど、連載しながら、それをやるのは難しくて…。

企画会議アレコレ

大石 スマホみたいに、マンガにめちゃめちゃ機能を付けて売るとかどうですかね。観光本としても楽しめるとか、歴史を学べるとか。作品の中身の話になってくるけど。

巣内 『うどんの国』が、まさにそういう作品でしたよね。香川県の観光案内漫としても面白く読めるという。今のマンガって、作家さん自身がガッツリ取材されていて、時代に合ったテーマを選んだり、トレンドやマーケ視点があったり、複合的にかなり深く設計されてますよね。

大石 そっか、すでに機能が付いている作品が多いんだね。

巣内 今思ったのは、「このマンガってこういうふうに読めるんですよ」っていう、翻訳にあたる伝達をするといいのかなって。なおかつ篠丸さん自身が見えるといいのかなって。ラジオみたいな形で話すのでもいいかもですね。

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篠丸 昔、『BE LOVE』の作家さんと3人でTwitterのスペースをやらせていただいた時、読者の方のアイコンが見えたり、反応が見えて楽しかったです。編集部の公式のアカウントもずっと張り付いてるから、監視されてる感がすごかったけど(笑)。でもラジオいいですよね。

巣内 一人でラジオ企画をランニングするのは大変だけど、二人とか三人とかで役割分担しながらやると無理がなさそうでといいですよね。

大石 わかった!自分の好きなブランドの服を描きまくるとかは? ファンとしての思いというか、いかにこのブランドが好きなのか、というのを出す意味で。

篠丸 それは許可取りがすごく大変(笑)。でも、こうやって今日話すまで、どういう服が好きなのかとか、どんなお酒が好きなのかとか話したことなかったけど、好きを発信するのも大事なのかなぁ。確かに昔、私が大ファンであるCLAMP先生の話をTwitterで書いたことがあって。その時は、一気にフォロワーが増えてました。

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大石 作品について発信するんじゃなくて、篠丸さんが好きなものを発信していく中で、「この人面白いな」と思って追っていくうちに、マンガ家だったということに辿り着くのがいいんじゃないかなぁ。

篠丸 そっか、逆転の発想ですね。

巣内 作品を絡めない方向で考えましょう!

篠丸 そうなんですよね! 個人で販促するとなると、自分のキャラクターで売ってくしかないですよね。以前、個人的に『死にたい死神』っていう自分が描きたいだけのマンガをウェブで掲載していたことがあったんです。その時も、急にフォロワーが増えたんですよ。でも、毎週コンスタントに掲載していく気力がなかったのと、商業ベースでやりたくなっちゃって。できれば本にしたいという欲が出ちゃったんですよね。

巣内 最近、クリエイターエコノミーについての話を聞いたんですが、プロの業界にいる人たちって、YouTuberみたいなビジネスモデルにシフトしづらいそうです。ヒカキンさんってYouTuberをやり初めの頃、スーパーのバイトをしながら動画を撮っていたらしいんですけど、本業とかにリスクがないからこそ振り切れるというか。篠丸さんの今の話みたいに、プロで技術のある人だと、どうしても既存のビジネスモデル上でマネタイズする方向で考えがちなんですよね、きっと。

篠丸 それはありますね。

大石 作画中とかすごく忙しそうだから、商業にならない活動に時間をあてるのも難しそうですよね。だったら、毎日22時にしょうもない絵を描く、とか! プロのマンガ家さんの、「これ気抜いて描いたな〜」みたいな絵って、なんかいいじゃん。

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篠丸 爆発力はないけど、毎日続けることで何か形になるかもしれないですよね。

大石 あとは散歩しよ! 要町を二人でしゃべりながら歩き回る、みたいなことを前に考えたよね。

巣内 いいじゃないですか! 夜22時くらいに(笑)。

篠丸 でも確かに、私は作画中の2週間くらいは本当に忙しくて、全く余裕がないんです。9時から18時までアシスタントさんを入れて、22時から深夜2時に夜の部でアシスタントさんが入る、っていう働き方ですね。〆切直前は、寝る以外はずっと描いてます。

巣内 1ヶ月の、残りの2週間はどんな感じなんですか?

篠丸 映画とか本とか漫画とか、いろんなものを見てとにかくインプットをする。そうじゃないと、アウトプットができなくなるんで。3日とか4日はそこにあてて、残りの日数はネームを書いてますね。

巣内 毎日何かするとか、考えなくてもいいかもしれないですね。月に1回とかでもいいのかも。

大石 占いは? 「篠丸占い」! どんな統計にも基づかない占いです、って最初に宣言して。篠丸が自分を元気づけるための占い(笑)。

篠丸 元気占い(笑)。でも、ポジティブなゆるいコンテンツを発信し続けてる人って、害がないから、深いことを考えずに見ちゃいますよね。

巣内 対象が篠丸さん自身に向けられると、みんな応援したくなりそうですよね。マンガ家さんって、お仕事柄、孤独になりやすくて、気持ちのアップダウンが多いということが、今日お話を伺っててもわかりましたし。元気玉みたいな企画で、篠丸さんに元気をあげようって。

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大石 篠丸さんが楽しいことしようよ! 最近、アホウドリのHPを新しくしようとしてて、いろいろ考えてたんですけど、極論は、理解されなくても楽しければいいと思ったんですよね。というのも、私自身が自分が好きなものとか好きな作家さんとかも、わかりやすくない人ばっかりだし。

巣内 第2回の真理子さんの取材で教えていただいた、器の作家さん(池本惣一さん根本裕子さん)ですね。

大石 そう。器の発信を全然してくれないなぁって。でも、それでいいんじゃないかなって。私はそういう人が好きだし。マンガを描いてる時は、100%読者のことを考えてるんだから、そうじゃない時は考えなくても、楽めることでいいんじゃないかな。篠丸のB面が見たいんだよ!

巣内 さっき提案に出た、ラジオとかしゃべるのは良さそうですよね。YouTubeでストックしないで、Twitterのスペースみたいに、形に残らないものでもいいし。僕が使っているstand.fmというアプリは、オンラインで対談したり、すごく簡単にラジオ番組作れますよ。それを、とりあえず隔週で10分ずつ発信してみるとか。

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篠丸 毎回テーマを決めて話したりするのも、楽しそうですね。Twitterで募集してみるとか。まりちゃんも、インスタライブとかやってましたよね。

大石 でも、いつやるとか決めてなくて、自分ができる時にレシピあげてみるとか、そういうペースでやってる。子育てしてるとね、それを言い訳にするわけじゃないけど、約束事をいっぱい持っておきたくないと言うか。

篠丸 うんうん、すごくわかる。

大石 最近知ったんだけど、京都のサーカスコーヒーというところが、毎朝5時半から珈琲を淹れるだけのインスタライブをやってるの。そういうのもいいよね。

篠丸 いい緩さですね〜。チルいね!

大石 マンガを描き始める前に、5分だけ話すとか。「朝礼です!」って。

巣内 クラブハウスで、マンガ家さんの朝礼とかありましたよ。瀧波ユカリさん達が、マンガ家仲間を集めて。そうやって、職業編みたいなかたちで、マンガ家さんをゲストに呼んでみるのもいいですね。あとは、友情合体みたいなかたちで真理子さんを呼んだり。

大石 巣内さんも他人事じゃないですよ! 呼ばれますよ!

巣内 僕と篠丸さんだと、メガネ合体とか(笑)。そんな感じで、緩く続けていく。続けるのが一番むずかしいと思うので、楽しく無理なくできるのがいいですね。それで更に、反応がもらえる構図になってるといいのかな。

篠丸 それがいい! 無反応が一番しんどいので…。

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大石 人生相談とか、いいかもしれないですね。Twitterで募集して。「イラストにしてお焚き上げします!」みたいな。

巣内 『HUNTER×HUNTER』の除念じゃないけど、呪いをもらって、それを絵にして焼く、みたいな(笑)。

大石 篠丸神社!

巣内 御札のイラストを作って、それをコピーして配るとか。

篠丸 そういえば、印刷物を作るのが最近楽しくて、そういうのやりたいですね。魔除けの御札とか!

巣内 いろいろ広がりますね。今日お話をお聞きして、篠丸さんが読者の方を支えにして、すごく大切にしていることがわかりました。新しい読者の方ともつながれるように、今日話題に出た妄想企画も、具体的に動いていきたいですね。篠丸さん、真理子さん、ありがとうございました!

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取材は千川駅近くにある「Tea Shop Parvati」でやらせて頂きました。素敵な空間のお店で、またお邪魔したいと思います。

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