少女地獄:殺人リレー

夢野久作の少女地獄を最近読み始めた。その中の短編である殺人リレーの感想をここに書いておく。

概要
殺人リレーは6通の友成トミ子から山下智恵子にあてた手紙と月川艶子(ツヤ子)から友成トミ子にあてた手紙で構成されている。
山下智恵子とツヤ子は女車掌であり、智恵子がトミ子に対して女車掌になるなと書いている第一の手紙からこの話は始まる。第一の手紙の中にツヤ子の手紙が入っており、それはツヤ子自身が運転手の新高から殺されそうな気がするという内容であった。その手紙がきて一週間も経たない内にツヤ子が死んでしまったために、女車掌なんかにはなるなと書いているのだ。
第二の手紙ではツヤ子を殺した新高が智恵子の会社に来てプロポーズされたという話で始まり、智恵子と新高の関係についてその後の手紙も語られていく。

感想
ほとんどが智恵子の手紙であるこの文章は、実際に起こった事実がどうだったのかがいまいちわからない印象を受けた。智恵子が物事の捉え方が間違っていたかも確認ができないため、本当にそんなことが起きたのか、という疑問を持ちながら後半は読んでいた。新高という人物が大きく関わってくるが、その本心もわからず終わってしまった。
そんな中で一番考えさせられたのは智恵子の心情の変化だ。新高を知らない状態、知った状態、新高が死んだあとの状態で心情が大きく変わってくる。その心境の変化は盲目的な思い込みのせいではないかと考えた。この話は終止智恵子の主観で語られていることからも推測されるように、人の主観的な思考についての話だったのではないだろうか。それが智恵子の手紙で語られる心情であり、状況や環境によって大きく変わっていく。またその中でもずっと変わらない、女車掌にはなるなという発言を対比さているようにも感じられる。他者の考えを受け付けない智恵子は自分で自分を納得させながら生きているが、その生き方が本当に正しいのかは考えどころである。

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