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ゴディバとハーゲンダッツから考えるブランド考

いつも美味しく頂いております。

ちょっと前のお話なのですが、ローソンでゴディバのショコラケーキが売られていまして、早速美味しく頂いてきました。

チョコレートも他のコンビニスイーツと比べると、甘いだけではなくしっかりとカカオな感じがしまして、素材からこだわってるなあと感じます。

その代わりに価格は税込み450円と、一般的に高いと言われる300円台前半をぶっちぎった価格付けになっていたんですね。これは、全コンビニスイーツ企画者が一度はやってみたい豪華な企画なのではないでしょうか。

個人的にはゴディバの商品自体についてはニュートラルなのですが、会社としての取り組みはものすごく興味深く感じています。後ほどたっぷり。

また、コンビニで買える高級スイーツと言えばハーゲンダッツ。通常150円前後のアイスクリームが多い中で、こちらも圧巻の300円。圧倒的な価格差を誇っています。

この2社は、高級スイーツという観点からすると同じように見えるのですが、ブランドの使い方が全く違うので面白いのです。

ということで、今日はそんな、ゴディバとハーゲンダッツから考える、ブランドとは何かと、その使い方のお話です。

ゴディバのブランド力の使い方

ゴディバは、1972年に日本で販売を開始しています。元々は高級チョコレート一本ですので、もちろん百貨店に販路を絞ったスタートです。

それから20年。1994年にゴディバジャパンが設立され、2015年からは百貨店に入っている店舗全店も直営店舗となり、店舗数は今では250店以上に拡大しているそうです。

ゴディバの成長では、よく2010年が比較対象に持ち出されます。その時に現社長に交代されたので、現社長が積極的な拡大路線を率いていらっしゃるのだと思います。

ブランドの使い方として特徴的なのが、とにかく違う販路を目指して突き進む、ということです。直近10年では、これまでの販路とは異なる販路を追加することで、圧倒的な成長率を叩き出しています。

当初の百貨店での販売に加えて、カフェ、コンビニ、EC、レストランとこれでもかというぐらいに異なる販路を突き進みました。

そのため、徹底して数量を取りに行く戦略にシフトした、とも言えます。百貨店では「一粒」300円のチョコレートですが、冒頭のスイーツは「ケーキ」という商品1つで450円です。

これは、ブランドの使い方としては、価格維持よりも販路拡大を優先している、ということでしょう。他の製品との価格差は気にしているとは思いますが、全体として「超高級」から「少し高めの価格」へと降りてきています。

現在のブランドコンセプトは「身近」な「憧れ」で、売上高は2019年で439億円と2010年比較で約7倍になりました。

ハーゲンダッツのブランド力の使い方

ハーゲンダッツは、1984年に日本で事業を開始しています。最初の5年間はやはり百貨店や高級スーパーへ販路を絞り展開していました。

1990年に入り、広告を入れるようになってから販路を拡げに行きました。その販路の拡げ方が非常に上手かったと言われています。

広告では「大人のアイスクリーム」というイメージを打ち出し、売り先でも徹底した品質管理を行ったのです。

特に売り先での品質管理は非常に厳しく、当時の一般的な冷凍機器の水準ではハーゲンダッツが溶けてしまうとして、専用の冷凍庫を置かせた程だとか。

この2つの施策の甲斐があり、ハーゲンダッツは「高級アイスクリーム」のカテゴリを創った上で、その地位を確立し、冒頭の価格差を得ているのです。

そのため、ハーゲンダッツはブランド力を、販路の拡大よりも価格の維持・向上に使っていると言え、2019年には希望小売価格のアップも果たしています。

現在のブランドコンセプトは昔と変わらず「純粋な至福」「親密」「安息」とされており、売上高は2019年で480億円となっています。

ブランドとその価値とは何か

では、この2社から、ブランドとは何かとその価値について考えてみます。

まず、身も蓋も無い言い方をすると、ブランド自体はただの識別記号です。他の物とは異なることを示す記号がブランドです。

一方で、ブランドの作り手の発信によって、消費者はその記号から様々なメッセージを読み取ります。そのため、ブランドは以下の3つの力を持つと言われます。

1つ目が、価格の優位性です。つまり、他の同類製品よりも高い価格付けを正当化する力です。一般的なブランドのイメージですね。

ゴディバもハーゲンダッツもこの価格の優位性については圧倒的な強みを持っています。他のチョコ、アイスより50%以上高い価格付けが受け入れられるのは、品質もさることながらこの力が大きいためです。

2つ目が、ロイヤルカスタマーの獲得力です。つまり、何度も買ってもらえる力ですね。価格とはまったく関係無いリピート率ですので、意外に盲点なところです。

ハーゲンダッツは、このリピート率が圧倒的と言われます。一方で、ゴディバは昔は良かったと思いますが、今はどうでしょうか。これは後ほどの施策の方と関係してきます。

3つ目が、他事業への展開力です。つまり、ブランドを使って、これまでと異なる事業を行ったり、異なる市場に出て行ったりする力です。

ゴディバはゴリゴリ進めていますので、非常に高いことの証明と言えますね。一方、ハーゲンダッツも高いのだとは思いますが、このパワーは積極的には使っていないようです。

というように、価格力、リピート力、拡張力の3点からブランドは評価されます。ゴディバ・ハーゲンダッツ共に、ブランド価値は非常に高いと言えるでしょう。

ちなみに、世の中にブランドと名が付くものは溢れていますが、多くは価格訴求力の面ばかりで使われてしまっています。

上記の3点からどれかが優れていれば(e.g. ダイソーやサイゼリアでもリピート力は高い)そのブランドに価値があると言えるよ、ということですね。

ブランド施策から見るゴディバとハーゲンダッツ

ゴディバ・ハーゲンダッツの今のブランド価値は高いことは分かりましたが、そのブランド力が未来においても強いかどうかはまた別の話です。

ここからは私見ですが、ブランド力を強める施策は3つの要素を持っていると考えています。

1つ目は、認知力のアップです。これは、単純にそのブランドを多くの人に、特にターゲットのお客様に知ってもらうことが強みになるということです。

この点、ゴディバもハーゲンダッツも長い年月を掛けた広告と施策によって大きな認知力を持っており、今も認知力の維持に努めていますので、今後も変わらないでしょう。

2つ目は、独自性のアップです。これは、他と何が違うのかを明確にするということです。品質なのか、雰囲気なのか、体験なのか。何か違うものを創り、それを訴求することで独自性は高まります。

この点、ゴディバもハーゲンダッツも、品質や最高の体験を全面に打ち出しており、この訴求自体も変わらないでしょう。

そして、3つ目なのですが、一貫性のアップです。これは、ブランドが与えるイメージをよりブレなく伝えること、ということです。

ここが今回一番言いたかったことでして、ハーゲンダッツはもの凄く一貫したコミュニケーションを行っておりので、そのブランドのメッセージは強まる一方です。

一方で、ゴディバは一貫性が乱れています。これまでは「百貨店での超高級チョコレート」だったのですが、そこから「コンビニで手に入るちょっと高いスイーツ」にまで、ゴディバが示すメッセージが変わっています。

そのため、消費者としては、ゴディバが何なのか段々と分からなくなってきている段階ではないかと感じています。正直、私もゴディバが将来どうなりたいのか、ちょっと分かりかねています。

もし、「身近」路線でいくのでしたら、元々の高級チョコレートが噛み合いませんし、逆に「憧れ」路線で考えると、何故コンビニスイーツまで出したのかということになります。

ということで、ゴディバは今このバランス取りの最中であり、上手くすると新しいゴディバになれる可能性がある一方で、悪くすると高級チョコレートも一般商品も難しいことになる可能性もあります。

また、ゴディバはこれまでは販路の拡大で売上アップを図ってきましたが、コンビニにまで出てしまいましたので、そろそろ販路拡大も限界です。ここからどうするのか、個人的にはもの凄く楽しみだったりしています。

これまでの、ブランド価値を「使って」大きくジャンプしている現状、どのような着地を見せてくれるのか、暫くはゴディバから目が離せません。

まとめ

ということで、ゴディバとハーゲンダッツからブランドを考えてみまして、ブランドには①価格、②リピート、③拡張性の3つの価値があり、それを強めるには、①認知、②独自性、③一貫性を強めることが必要というお話でした。

まあ、美味しいものが手に入りやすくなれば、消費者としては大満足なのですけどね。価格訴求力など捨てて、リピート力に全振りして欲しい。

ちなみに、それを徹底したのがユニクロでして、ZARAを抜いて、2月に世界のアパレル業界の時価総額でNo.1になりました。

ただ、ハーゲンダッツが価格の正当化を辞めてしまったら、きっと美味しさ半減なのでしょうね。うっとりするようなメッセージとそれに見合った価格があるから、ハーゲンダッツはより美味しく感じるのだと思います。

つまり、私たちは製品と一緒に、ストーリーも食べているということですよね。本当に人間って贅沢な生き物です。

なーんて、日常的な身の回りの物でも、少し情報を知っているだけでこんなに面白くなるという良い例かなと思い取り上げてみました。

皆さまの、美味しいデザートの時間に貢献できましたら幸いです。

ではでは。


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<参考>

高級チョコの売り上げを3倍にした「正射必中」のビジネス論

「変わらぬ美味しさ」と「楽しさの体験」

ゴディバジャパンの売却額1000億円は高いのか?事業価値を考える

「憧れ」と「身近さ」の両立。ゴディバの急成長を実現した、常識に囚われない戦略

ブランド構築の理論と実際 - CORE

「変わらぬ美味しさ」と「楽しさの体験」

ブランド価値評価研究会報告書の公表について


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