ぽえむ18

「花火」ほうふ しなこ

ほんのりと残る焦げた香りが好きだった

指に染みつく火薬の匂いが好きだった

地面に焼けた紙屑が落ちて
瞼を閉じた時に見える微かな色が好きだった

煩いくらいの音がまだ聞こえてくるようで
それがまた好きだったりした

誰と一緒だったか
誰の笑い声だったか

点かないマッチに苛立ちながら
消えた蝋燭を楽しげに眺めていた

ただそこにいるだけでよかった
それが眩しかった

夏のひと時
花火のように
生温い風と過ぎ去った

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