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ファクトで見る「役に立つ」と「意味がある」のマーケット

 ここ最近のマーケティング、プロモーション、ブランディング業界でのトレンドが機能から世界観へのシフト。「役に立つ」より「意味がある」モノで戦おう、という流れができています。

 とくにこの「意味がある」へのシフトの第一人者が、山口周さんです。

 日本はずっと、「役に立つけど、意味がない」分野で戦ってきました。家電メーカーや自動車メーカーが典型で、トヨタの車のほとんどが、「役には立つけど、意味がない」という領域に属してしまっています。 ところが欧州メーカーは「意味が価値」の車ばかりです。ベンツやBMWなどのドイツメーカーは、「乗る意味」という感性価値を与えています。

  また、イタリアのフェラーリ、ランボルギーニなどの、数百馬力のエンジンを搭載したスーパーカーは、日本の法定速度からすれば完全にオーバースペックです。ですが、決して日常使いの車とは言えないのに、1000万~数億円の「意味がある」わけです。つまり、役に立つレベルが低い車の方が、値段が高いんです。

 機能を売りとする「役に立つ」商品は、一番だけしか勝てない。一方で、顧客にとって「意味がある」商品は、他商品との優劣ではなく、「好き」で選ばれるので、たとえ機能で負けようが、愛され続ける。

   そんな両者の違いがあり、最近は独自の世界観をまとったプロモーションが注目を浴び始めています。

 しかしながら、果たして本当に「役に立つ」より「意味がある」を重視していいのでしょうか? 今日は、「役に立つ」と「意味がある」の市場をファクトで見てみます。

ファクトで見る、「役に立つ」と「意味がある」のマーケット

 山口周さんがよく「意味がある」モノで例にあげるのが、車のフェラーリとカメラのライカ。どちらも、超高価格帯の商品ですが、別にこれといって他社商品より良い機能を備えているわけではありません。まさに顧客にとって、フェラーリだからこそ、ライカだからこそ自分にとって意味がある商品です。

 実際のところ、意味がある市場は、どれくらいスケールできるのでしょうか? 同じ市場で、「役に立つ」で選ばれている企業を2つほど上げてみます。(データはすべてwikipediaからとってきました)

図2

 まずはトヨタとフェラーリ。売り上げは100倍の差、従業員の数も100倍以上です。(一人当たりの売上は、フェラーリのほうが高い)

図4

 次に、カメラ市場。ニコンとライカを比べても、同じですね。売上も従業員も、ニコンのほうが圧倒的です。

 この2つの事例から分かることは、規模の大きさでは、「役に立つ」と比べて「意味がある」市場は100分の1以下になってしまうということ。フェラーリやライカの超グローバルブランドメーカーですらこの状態なので、意味の世界で戦おうとする普通のブランドならもっと規模は小さくなるでしょう。

「意味がある」戦いは個人戦・少数精鋭に向いている

 今日は、「役に立つ」と「意味がある」ではどちらが良いのか?そんな議論がしたいわけではなく、ただファクトベースでは「役に立つ」マーケットのほうが規模が大きいとお伝えしたかった、までです。

 とはいえ、資本力で劣る個人・スモールブランドが、機能で戦うのは至難のわざ。基本的には、顧客にとって「意味がある」、顧客が指名買いをしてくれる愛される商品づくりをするのがベストだと思います。

 トヨタやニコンのような商売をしたいならともかく、個人戦ならスケールが求められるわけではありません。逆にあなたが超巨大企業のマーケターであれば、安易に「意味がある」市場への参入は控えたほうがいいかもしれません。ジャンルやモノにもよりますが、「好き」だけでマスから選ばれるのは本当に難しい。それがうまくっているのはAppleくらいです。

 

 最後に小話を。たしかに、技術を持たない個人が素直に機能で戦うのは難しいです。ただし、商品・サービスが「役に立つ」と思われるのはまた別の話。新しいテクノロジーとサービスの掛け合わせだったり、今までの既存市場になかった商品を外から持ってくることで、いかにも「役に立つ」ように見せることは十分可能です。

 今はコロナのせいで大打撃でしょうけど、UberやAirbnbなどのシェアサービスは、新しい機能を実装したわけではないですが、確実に「役に立つ」商品でした。

 新しい視点を持てば、「役に立つ」は生み出せるということも覚えていて欲しいなと思います。

 「役に立つ」と「意味がある」について、もっと知りたいという方は最近出たこちらの本がオススメです。今回の記事も、この本を読んで「ところで、両者の売上規模はどれくらい違うの?」と疑問が湧き、備忘録がてらまとめてみました。くまモンを作った水野さんと、マーケターの山口周さんの対談本、目から鱗の発見が続くので、ぜひ読んでみてください。

 ではでは、今日はこんなところでおしまいです。

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