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『オッペンハイマー』映画感想文

公開中の『オッペンハイマー』を鑑賞してきました。原爆の父、物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの自伝映画です。

まずは日本人として映画を観ていて辛い気持ちになりました。原爆投下の経緯が、やっぱり日本人を人だと思っていない。

とはいえ、アカデミー賞作品賞含め7部門受賞した作品。原爆のことをよく知らない世界の人々向けて、広く原爆のことを知ってもらえる作品であることは間違いなく、クリストファー・ノーラン監督には、よくぞ撮ってくれましたと拍手を送りたい。


核兵器を生み出したプロジェクト『マンハッタン計画』の引き金になったのは、1939年アインシュタインがルーズベルト大統領にあてた信書でした。ウランを使用した爆弾の脅威とナチス・ドイツの核開発を示唆した内容です。

映画の中に3回ほどアインシュタインが登場しますが、その場面は描かれていません。あくまでもオッペンハイマーのお話ですから、入れなかったのだと思います。アインシュタインは信書を送ったことを生涯悔いていました。

オッペンハイマーもナチス・ドイツよりも早く核開発を成功させなければならないという強い思いがありました。アインシュタインもオッペンハイマーもユダヤ人でナチス・ドイツを恐れていました。

ウランを提供したユニオン・ミニエール社はウラン鉱石を採掘したものの、使い道がなく『マンハッタン計画』の話がなければ会社は潰れていました。

どのタイミングが違っても原爆開発は成功しなかったのに、絶妙なタイミングで成功します。実現したい人がいれば叶ってしまうのでしょう。

核にどれほどの威力があるのか解らなければ、核が戦争の抑止力になり得ないという論理で原爆を落とす人々。一方で核の脅威が抑止力となり平和な世界が維持できているのもまた現実だ。

オッペンハイマーは抑止力こそ平和な世界をつくると信じていたけれど、彼が核開発を成し遂げてしまったが故に、皆が核を持つ世界になった。

映画には描かれていないけれど、その後オッペンハイマーは核軍縮を呼びかけ、核兵器競争を防ぐために働いた。


それでも戦争はまだある

色のついた場所は現在の紛争地域

2024年現在 規模の大きい紛争地帯
★パレスチナ×イスラエル 2023年10月から
僅か半年たらずで死傷者11万人
★ウクライナ×ロシア 2022年2月から
ウクライナの死者数(約3万人)
ロシアの死者数(約2万人超)


最後にアインシュタインが娘にあてた手紙を貼ります。アインシュタインの理論が正しいのなら、わたしたちがつくるべき爆弾は愛の爆弾のようです。

私が相対性理論を提案したとき、ごく少数の者しか私を理解しなかったが、私が人類に伝えるために今明かそうとしているものも、世界中の誤解と偏見にぶつかるだろう。必要に応じて何年でも何十年でも、私が下に説明することを社会が受け容れられるほど進歩するまで、お前にこの手紙を守ってもらいたい。

現段階では、科学がその正式な説明を発見していない、ある極めて強力な力がある。それは他のすべてを含みかつ支配する力であり、宇宙で作用しているどんな現象の背後にも存在し、しかも私たちによってまだ特定されていない。この宇宙的な力は愛だ。科学者が宇宙の統一理論を予期したとき、彼らはこの最も強力な見知らぬ力を忘れた。愛は光だ。それは愛を与えかつ受け取る者を啓発する。愛は引力だ。なぜならある人々が別の人々に惹きつけられるようにするからだ。愛は力だ。なぜならそれは私たちが持つ最善のものを増殖させ、人類が盲目の身勝手さのなかで絶滅するのを許さないからだ。

愛は展開し、開示する。
愛のために私たちは生き、また死ぬ。
愛は神であり、神は愛だ。

この力はあらゆるものを説明し、生命に意味を与える。
これこそが私たちがあまりにも長く無視してきた変数だ。
それは恐らく、愛こそが人間が意志で駆動することを学んでいない宇宙の中の唯一のエネルギーであるため、私たちが愛を恐れているからだろう。
愛に視認性を与えるため、私は自分の最も有名な方程式で単純な代用品を作った。「E = mc2」の代わりに、私たちは次のことを承認する。

世界を癒すエネルギーは、光速の2乗で増殖する愛によって獲得することができ、愛には限界がないため、愛こそが存在する最大の力であるという結論に至った、と。私たちを裏切る結果に終わった宇宙の他の諸力の利用と制御に人類が失敗した今、私たちが他の種類のエネルギーで自分たちを養うのは急を要する。

もし私たちが自分たちの種の存続を望むなら、
もし私たちが生命の意味を発見するつもりなら、

もし私たちがこの世界とそこに居住するすべての知覚存在を救いたいのなら、愛こそが唯一のその答えだ。

恐らく私たちにはまだ、この惑星を荒廃させる憎しみと身勝手さと貪欲を完全に破壊できる強力な装置、愛の爆弾を作る準備はできていない。

しかし、それぞれの個人は自分のなかに小さな、しかし強力な愛の発電機をもっており、そのエネルギーは解放されるのを待っている。

私たちがこの宇宙的エネルギーを与えかつ受け取ることを学ぶとき、愛しいリーゼル、私たちは愛がすべてに打ち勝ち、愛には何もかもすべてを超越する能力があることを確信しているだろう。

なぜなら愛こそが生命の神髄(クイントエッセンス)だからだ。

私は自分のハートの中にあるものを表現できなかったことを深く悔やんでおり、それが私の全人生を静かに打ちのめしてきた。

恐らく謝罪するには遅すぎるが、時間は相対的なのだから、私がお前を愛しており、お前のお陰で私が究極の答えに到達したことを、お前に告げる必要があるのだ」。

お前の父親

アルベルト・アインシュタイン

アルベルト・アインシュタインから娘、リーゼル・アインシュタイン宛ての手紙


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