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「マヌルネコ」が『最古の猫』なワケ

今や、動物園で「スナネコ」と人気を二分する、「マヌルネコ」。

ご存知の方は多いと思うが、那須どうぶつ王国で2匹の赤ちゃんが元気に育ったことで注目され、ずんぐりムックリな体つきに、憎めない風貌がなぜか大人気に。

「マヌルネコ」とは、

学名はOtocolobus manul (= 耳の短い小さい野生ネコ)

マヌルネコは、もちろんネコ科の動物なのだが、
ネコ科というと、ライオンやトラ、ヒョウの他、カラカルやオオヤマネコ、チータなんかも含まれて、親戚が多い。

じゃあ、マヌルネコと猫はどれくらい近縁か?


猫の進化をたどる

動物の類縁関係を知るための指標に、進化の道筋を樹木の枝分かれのように示した図、"系統樹”がある。

今回、ネコ科をわかりやすく知るために、系統樹と猫の種類を示す分類表とを組み合わせて作ってみた。


ネコの系統樹

参考:O’Brien, J. S. and Johnson, W. E. (2007). The evolution of cats. Scientific American July 2007

うーむ、小さすぎたか?
見えないところは、拡大して見ていただきたい(^^;

図表をざっくり説明すると、左側にある1080万年前の「ネコの祖先」をスタートして、左から右へ枝分かれしながら進化して、横軸の数値0の現在へ向かう。
縦方向はネコの親戚の種類を示す。

ネコ科動物は、まず大きく赤い網掛けの「ヒョウ亜科」、青い網掛けの「ネコ亜科」の2種類に分類される。

「ヒョウ亜科」には、ライオン、トラ、ヒョウといった大型の動物が並び、「ネコ亜科」はもっと小さな、「マーブルキャット族」「カラカル族」、「オセロット族」、「オオヤマネコ族」、「チーター族」、「ネコ族」に分類される。

「ネコ族」はさらに「ベンガルヤマネコ属」「マヌルネコ属」、そして「ネコ属」に分類されるのだが、我が家のヨタロウやショコラ、そして皆さんが飼っている猫ちゃんが含まれる、オレンジで囲った「イエネコ」と、黄色で囲った「マヌルネコ」との近縁度合いは……

マヌルネコがオオヤマネコやチーターと比べて、かなりイエネコに近い種だということがお分かりいただけるだろうか。


何百年も生きている猫??

そして、ここからが本題。

「マヌルネコ」がなぜ『最古の猫』と呼ばれるか?だ。

地球上のあらゆる生物は、すべて進化の道筋をたどっている。

自然淘汰されて、現代まで生き延びることができずに絶滅してしまった生物もたくさんある。


イエネコの祖先のリビアヤマネコが出現したのは13万年前で、図表中の青い丸の部分。

イエネコの祖先「リビアヤマネコ」については、先日の記事で紹介しているので是非参考いただきたい。

イエネコが出現した13万年前に対し、マヌルネコが出現した時期を系統樹の線でたどると、なんと590万年前までさかのぼることになる。

マヌルネコは、590万年前から絶滅することなく、昔と変わらない姿でマヌルネコとして生き続けているということだ。

同じ「ネコ亜科」の中では、「マーブルキャット」が540万年前に出現し「カラカル」は560万年前、そしてあの「チーター」でさえ490万年前の出現で、マヌルネコには及ばない。

これが、マヌルネコが最古な理由である。

ちなみに、マヌルネコと人気を二分する、砂漠の天使「スナネコ」が出現したのが200~300万年前。

いずれにしても、まぁなんとも、地球規模の壮大な話だ!


マヌルネコってなんだ?

マヌルネコは学名からもわかる通り、モンゴル語で「小さな山猫」という意味を持つ。

中央アジアの高地や乾燥地帯に広く生息し、主に標高の高い寒いところでウサギやネズミ類、リス、鳥などを捕食して暮らしている。

体重がおよそ2.5kg~5kgなので、イエネコとほぼ一緒。

特徴的なのは、顔の横についている耳。

標高の高い場所では、岩場くらいしか身を隠すところがなく、耳が岩の上からはみだしてみつからないよう、横についたと言われている。

そしてもうひとつの特徴が、猫とは思えない、人間と同じ真ん丸の瞳だ。

マヌルネコの瞳孔が丸い理由は、まだはっきりわかっていない。

が、そもそも猫の瞳孔が縦長なのは、夜行性であるためで、夜行性の猫やキツネは、わずかな光を検知するために、網膜の光の感度が高く、急な光の明暗に対して、縦長の瞳孔は素早く効率よく対応できるようになっている。

また、草むらや茂みなどの縦長の障害物が多いところに住んでいて、縦長のスリット状の瞳孔が有利ともいわれている。

マヌルネコは、草むらや茂みがないところに住んでいて、瞳孔を細長くする必要がなかったのかもしれない。

結果的に、マヌルネコの丸い瞳と横についた耳のバランス、この進化こそが、人気者としての地位を築くことになった。


そして私がマヌルネコに惹かれた理由。

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左は我が家のマヌルネコ、ヨタロウ。大きな親近感……

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