書体というデザインで世界観が伝わる ~筑紫書体~
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会が主催する「デジタル時代のフォント 筑紫書体」に参加してきました。
本当は今までに文書をつくるときも、本を読むときにも書体に注目したことはありませんでした。でもフォントのデザインの話ってなんか面白そうだし福岡の会社だから行ってみようと思いました。
フォントワークス株式会社で筑紫書体をはじめ、たくさんの書体デザインをされてきた藤田さんの筑紫書体ができるまでのお話とデザイナーとして書体を作る側と使う側のクロストーク。
印刷文字には印刷する過程でできるインクの滲みやボケが生じますが、デジタルの時代になるといかにシャープに表現できるかということが求められるように。
でもシャープに表現された文字は目には優しくないのです。細くてカクカクしていて殺風景になってしまいます。
そこで目に優しく読みやすい文字を作ろうと「足し算のデザイン」でつくられたのが筑紫書体です。滲みやボケ、インクだまりを調味料のようにあえて足すことでできる柔らかいデザインです。
均一さによる整ったきれいさも大事ですが、活版のよさを継承した動きや伸びやかさのあるデザインは親和性が生まれます。
この話を聞くと今まで読みやすいとすらすらと読めた本は、内容もさることながら読みやすい書体が使われていたのかもしれないと思いました。
ひらがなのデザインには漢字の10倍かけるそうです。
色々な書体をならべて比べてみると同じ「な」でも下に丸みが少しあるだけで軽やかに見えるし角があるとシャープにみえます。同じ字でもこんなに受けるイメージが違うとは意外でした。
私自身、文字を書いていても画数の多い漢字よりも少ない漢字やひらがなのほうが気を抜くと形が崩れてしまって書きにくいと感じるところと同じなのかもしれません。
今回とても印象的だったのは、書体によってこの書体は威張った感じがするとか優しそうとか擬人化したような表現をされていることでした。
「書体が世界観をつくる」というのが最初はピンときませんでしたが、パッケージデザインや広告、CDジャケットなどの文字を見て、それがどんな内容なのかをイメージを膨らませて買いたいかどうか判断します。もしカクカクした明朝をつかえば少し真面目っぽい雰囲気になるし、丸みを意識した書体であれば親しみやすさをイメージさせられますよね。和菓子なら普通の行書でもイメージを伝えられるけど、和菓子とクリームといった和洋折衷のお菓子ならそれを伝えられるのはどんな書体かと想像してみると、どんな文章を書くかによって書体を変えることが世界観をつくることだというのを実感できたので、大きな収穫でした。
書体の話以外にも、求められているものをつくるというよりは自分がちゃんとときめくものをつくると話されていたことや、些細なやりとりが自分の中にずっと残ってそれに支えられていたり、ターニングポイントになっているという藤田さんのお話を楽しく聞かせていただきました。
要望として「・・・があったらいいと思うんだけどできないかな」といった声でも、正式な依頼にしてもすぐに動いて試作品をみせる行動力は私も真似していきたいです。
もっと自分が物事から受けるイメージの解像度をあげる努力をしたい。
書体という視点を得られたことでどうしてこれは怖いと感じるのか、なんとなく好き・なんとなく苦手、というイメージをどうして受けるのか考えるきっかけになりました。
デザインは一部の仕事としてデザインをしている人のものだと感じでいましたが、書体ひとつにしてもそれは生活の一部で、だれでもデザインができること、そこに配慮ができるかがこれからは誰にでも必要とされていくはずです。
筑紫Bヴィンテージ明朝Rの「る」が初めて見た書体でいつでも使いやすい書体じゃないけど丸くてかわいい。好きな文字みたいなものを書体見本帖をみているだけでもイメージができて楽しいです。
些細なことに手を抜かず、ちゃんと目を向けよう。
自分にできるデザインの意識を持とう。
やってみたいこともすぐに行動してしまおう。