「楽園のカンヴァス」を読んで

先日、原田マハさんの楽園のカンヴァスを読んだ。

本書はフランスの画家であるアンリ・ルソーのある作品の真贋の評価をニューヨーク近代美術館のキュレーターであるティム・ブラウンと日本人研究者の早川織江の二人が行う過程での心理を描写するものとなっている。

その作品の評価は作品に関しての古い物語を一日一章ずつ、七日間かけて読み進めることで行われるが、物語の最終盤で呈示されるキーワードは「永遠を生きる」である。

その言葉は直接的にはアンリ・ルソーにとっての大事なひとが彼の作品のモデルとなり、その身が果てた後も作品の中に生き続けることを意味していると理解する。一方で、アンリ・ルソーにその作品を書かせた若き日のある大物画家の思いや、作中のティムと織江さんとの感情がそうであるように、それは深い愛情や純粋な信頼関係を通して築き上げられるひととひととの関係が永遠となり得ることを暗示しているようにも感じとれる。

本書は原田マハさんの代表作のひとつであり、ベストセラーである。恥ずかしながらそれを知らなかった私はあるひとに勧められるようにして本書を読んだのであるが、そのような素敵なひととの出会いも、たとえそのひとが遠くに行ってしまったとしてもその記憶は永遠となり得る尊さがあると思う。

そのあるひとはミステリー小説を読まない理由として「はらはらしたくないから。」と言った。でも本書はミステリー小説ではないかもしれないけれど、十分にはらはらする、次のページを読み進めたくなる衝動に駆り立てられる素敵な作品だと私は思う。

#読書感想文 #楽園のカンヴァス #原田マハ #新潮文庫 #読書

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?