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「チーム」と「コミュニティ」はどう違う?コミュニティへの解像度を上げよう!

チームとコミュニティはどちらも人のグループで、一人では実現できないことが実現できる点がどちらも共通しています。しかし、この2つの実態は微妙に異なっています。いや、180度違う側面すらある。

だから、人のグループについてチームとコミュニティのどちらで捉えるかによって、振る舞いやマネージメントの仕方も変わってきます。この点を踏まえておくことで、逆効果な行動をとってしまうリスクも回避しやすくなるはずです。

では実際にチームとコミュニティがどのように違うのか深掘りしてみましょう。それによって一層コミュニティを捉える解像度を上げることができるはずです。




チームとコミュニティの対比

まずはチームとコミュニティを対比させて捉えてみましょう。もちろん中にはチームのようなコミュニティもあれば、コミュニティのようなチームもあるので、完全にスパッと分かれるわけではありません。ですが、一連のグラデーションのどこかに位置付けることはできるはずです。

以下の図がチームとコミュニティの対比です。

①目的の所在

例えば、サッカーチームのことをサッカーコミュニティとは呼びません。つまり、サッカーのように「勝負をかけた相手」「達成すべき目標」など、グループの外部にある目的を志向した場合にチームと呼ばれます。会社も同様に、売上や課題の解決などの目的が外部にあるためチームです。

一方で、地域コミュニティのことを地域チームとは呼びません。地域のように「お互いの安心安全」「残すべき文化」など、グループの内部にある目的を志向した場合にコミュニティと呼ばれます。会社においては、社内の勉強会などはコミュニティと呼べるでしょう。

②関係性の持続性

先述のとおり、チームは目的が外部にあります。そのためチームメンバーは目的のための手段とみなされ、目的の達成のためにメンバーの入れ替えが起こり得ます。また、チームが目的を達成した場合にはその存在意義を失うことになるのでチームそのものが解散することもある。そのため、チーム内のメンバー同士の関係性は短期になりやすいのです。

一方で、コミュニティは目的が内部にあります。そのためコミュニティメンバー自体が目的の一部であり、自発的な入退会などをのぞいてメンバーの入れ替えは起きません。また、メンバーがそのコミュニティの存在意義を感じているあいだは解散する必要がないため、コミュニティ内のメンバー同士の関係性は長期になりやすいのです。

③リーダーシップの流動性

チームでは外部にある目的のためにメンバーが存在します。そのため、個人の意志と関係なく役割や機能を果たすことが重視され、指示系統の明確なリーダー(もしくは監督)が任命されます。意思決定はリーダーに集中し、階層構造によって統率が取られます。

一方で、コミュニティではメンバー自身が目的であり、個人の意志が尊重されます。そのため、メンバーの関心や悩み事など、状況によってテーマが常に移り変わり分散的なリーダーシップが必要となります。コミュニティではメンバー間の関係はフラットで、誰もがリーダーシップを発揮する機会があります。


根本的な違いは「目的の所在」に集約

①〜③以外にも、まだまだチームとコミュニティの違いがあります。例えば、関与や貢献の度合いに自由度が高いことがコミュニティの特徴ですが、これはチームでは許されません。チーム一丸となって外部の目的に向かって役割を果たしチームに貢献することが求められます。

また、コミュニティには現状肯定による安心感や居場所の感覚があることが特徴ですが、チームでは安心感や居場所の感覚よりも現状否定による動機付けがマッチするケースが多いものです。これも外部の目的を達成するためです。

さきほど説明した「②関係性の長短」と「③リーダーシップの流動性」も目的の所在が根本的な原因になっていることを考えると、チームとコミュニティの本質的な違いはすべて「①目的の所在」に集約できる、とも言えそうです。


コミュニティ運営者のジレンマ

コミュニティ運営者はこの「目的」にまつわるジレンマにぶつかります。運営者にはコミュニティメンバーとは別の目的が存在することが往々にしてあるからです。そして、企業活動の一環としてコミュニティを運営する場合はさらに多くの関係者がそれぞれの目的をコミュニティに投影しているケースすらあります。

つまり、コミュニティは内部の目的(メンバーの目的)を叶える場でありながら、コミュニティ運営者とその周辺の関係者の目的を叶える場でもあるのです。このジレンマをどう解消すればいいのでしょうか?

メンバーも運営者もその周りの関係者もひっくるめてステークホルダーと呼ぶことにします。ステークホルダー全員の目的が一致しているのなら話はカンタンです。全員でその目的に向けて進んでいけばいいのです。しかし、ほとんどの場合、ステークホルダーはそれぞれ複数の異なる目的を持っています。

その場合、優先すべきは誰の目的でしょうか?まずは意思決定者、企業で言えば運営者(コミュニティマネージャー)の上司です。コミュニティの存続を左右する人の賛同が得られなければ、コミュニティを続けることができなくなるからです。そして、その次に運営者です。運営者のモチベーションもコミュニティの健全な存続に影響が大きいため、その目的は重視しないといけないでしょう(意思決定者と運営者が同一人物の場合もあります)。その次にようやく来るのがメンバーの目的です。これが実現できなければメンバーはコミュニティを離れていくでしょう。

つまり、目的の優先順位は「意思決定者>運営者>メンバー」となります。

しかし、これはメンバーの目的を蔑ろにすることを意味しません。この優先順位がある上でなお、ステークホルダー全員の目的を叶えようとするところにコミュニティ運営の難しさと面白さがあるのです。ステークホルダー全体の目的を叶える方法論についてはまた別途論じたいと思います。


ハイブリッド組織

先述のとおり「チームのようなコミュニティ」もあれば「コミュニティのようなチーム」もあるわけですが、そのような中間的な組織のことをハイブリッド組織と呼んでみたい。この研究成果の最後にハイブリッド組織について考えてみましょう。

例えば、狩猟採集生活においても、昼間は狩猟や採集といった外部の目的のためにチームとして活動します。そして、夜になると焚き火を囲んでコミュニティの存続のために昼間に起きたことを情報交換をします。

会社でも、利益を生み出すためのチームとしての活動もあれば、勉強会のようなコミュニティとしての活動もあります。それは業務時間と業務時間外、というように時間で区切られています。

大切なことは、チームとコミュニティのモードを時間のなかで流動的に切り替えていくことです。獲物を追う時間と焚き火を囲む時間を往復することで、グループはバランスが取れて持続可能性が高まります。

あるいは、チームとコミュニティが不可分なマーブル状に融け合っている状態もハイブリッド組織と呼べそうです。全体としてはコミュニティとして長期的な関係を築きながら、プロジェクトとして短期的なチームが組成されて外部の目的に向かって推進力を発揮するのです。

このように、チームとコミュニティは混ざり合いハイブリッド組織になることでその真価を発揮します。


この研究の活かし方

コミュニティは内部に目的があり、メンバーそのものが目的化しているグループです。しかしコミュニティには複数人のステークホルダーがいるケースもあるので、そのニーズを同時に満たす設計を考える必要があります。みなさんのコミュニティにはどのようなステークホルダーがいるでしょうか?ぜひ振り返ってみてください。

また、ハイブリッド型組織のようにチームとコミュニティのグラデーションを行ったり来たりするのも有意義だと思います。コミュニティ的なグループはときおりチーム的な外部の目的を設定することで新しい経験や情報が手に入るでしょう。逆にチーム的なグループはときおりコミュニティ的な内部の目的を設定することでメンバー同士のつながりが増えたり深まったりするでしょう。

みなさんが関わるコミュニティの目的について考え、運営方法を改善するキッカケにしていただけたら嬉しいです!



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