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「時間がなくて長文になっちゃた」by パスカル

"I am sorry to have wearied you with so long a letter but I did not have time to write you a short one"

確率論や『パンセ』で有名なブレーズ・パスカルはこんなことをある手紙の中で言っていたそうだ。

時間なかったから長文の手紙送っちゃった。時間があれば短くできたんだけどね。という意味。

普通なら「時間がないから短文になった」というところを、逆に「時間がないから長文になった」というところが、彼の文章表現に対する姿勢を表している気がする。

パスカルが言っている「時間がなかった」というのは、書く時間のことではなくて、重要なポイント以外を削る時間のこと。

表現は、冗長なものから人の心を打つものを削り出す作業と言えるのかも知れない。

パスカルから150年ほど時間をさかのぼってみると、ミケランジェロも、絵の具を塗り重ねる絵画よりも、大理石の中に秘められた美を削り出して解放する彫刻の方が芸術として優れていると考えていたという。

パスカルもミケランジェロも、削ることに重きを置いている点で共通している。

ミケランジェロの言葉をいくつか引用してみよう

Beauty is the purgation of superfluities. (美は余分なものの浄化である。)
The more the marbles wastes, the more the statue grows. (余分の大理石がそぎ落とされるにつれて彫像は成長する)
I saw the angel in the marble and carved until I set him free. (私は大理石の中に天使を見た。そして天使を自由にするために彫ったのだ)
The marble not yet carved can hold the form of every thought the greatest artist has. (まだ彫られていない大理石は、偉大な芸術家が考えうるすべての形状を持っている)

絵画もある意味、現実の一部を捨象している意味で、削り出されたものと言えるはずだ。ただ、ミケランジェロはその製作過程すら、削り出すことを求めたのだろう。

絵画や彫刻以外の芸術にも、「削る」ことの重要性がふくまれている。

写真は三次元である世界の奥行き方向の次元を捨象して削り出す芸術。音楽はリズムと音階を定めたことでタイミングや周波数を制限し、無限の可能性から美しい響きを削り出した芸術。

私たちは、無限の可能性のなかから慎重に削り出されたものを見て、そこに意志を感じたり、感動するのかもしれない。

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