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「ソーシャルネットワーク」(2010年)

デヴィッド・フィンチャー監督作品。マーク・ザッカーバーグが、フェイスブックを作る話。
映画としてはそれほど面白くない。フィンチャーは殺人事件をめぐるサスペンスなどを作らせると最高だが、本作や「ベンジャミン・バトン」のような暴力や殺人のおこらない映画だと、盛り上がらないのだ。

学生が起業して成功する物語なので、一種のアメリカン・ドリームというか、サクセスストーリーではある。ただし、ザッカーバーグはハーバード大学の学生で天才プログラマーなので、サクセスの度合いが違っていて感情移入はしにくい。アメリカにはジョブスやビル・ゲイツ、イーロン・マスクといったパーフェクト超人みたいな起業家がたくさんいるから、本作のザッカーバーグくらいだとむしろ親しみを感じるのかもしれないが。

本作でおもしろいのは、ソーシャルネットワークというものがいろいろな形で示されているところだ。物語の中心になる「フェイスブック」はもちろんだが、ハーバードには名門クラブがあって、映画の冒頭でザッカーバーグが当時の恋人に熱っぽく語るシーンがある。そして、彼の友人も必死になってそのクラブに入ろうとする。会員制のクラブといった仕掛けは、のちにザッカーバーグを訴える双子がハーバードの学長に会いにいくときも、コネを使ってアポを取る、といったところで示される。
そして、オンラインのサービスである「フェイスブック」が拡大していく際に、オフラインのネットワークが重要になってくるという点も興味深い。大きいのは「ナップスター」のショーン・パーカーとの出会いで、映画の中ではパーカーはフェイスブックを偶然知って、ザッカーバーグたちにコンタクトをとる。
つまり、タイトルの「ソーシャルネットワーク」というのは「フェイスブック」のことだけを示しているわけではないということだ。

本作はオンラインのネットワークサービスを作り上げた人物の物語でありながら、オフラインのつながりに重きを置いている。それは映画を作った人間が年寄りなのかもしれない。最初からネットワークにつながっているZ世代が作ったら、違うテイストになっていたかもしれない。ただ、小生も同じ年寄りとしては、本当に大切なのは一番身近にいる人なのだ、という本作のテーマがしっくりと来るのだった。

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