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怪物はささやく

ホラー映画かと思っていたら、感動映画だった。
人生においてすこし休みたいと感じているような人にいいかもしれない。ただし、それほどスイートな話ではないのでご注意を。

インキが飛び散るような美しいイメージではじまる本作。虚構と現実の区別がつかない少年が、「怪物」と接するうちに、「あること」を受け入れていく物語。

「怪物」は悪役ではなく、父親のかわりとでもいうような存在。怪物をリーアム・ニーソンが演じている。とはいえ、かなり声は加工しているようで、「こんな声だったかな」という気はする。
また、主人公の少年と仲が悪いながらも愛情を注ぐという難しい役どころをシガニー・ウィーバー、少年の母親役を「博士と彼女のセオリー」や「イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり」のフェリシティ・ジョーンズが演じる。シガニー・ウィーバーとフェリシティ・ジョーンズが母娘役というのはさすがに無理があるというか、シガニー・ウィーバーはいかにもアメリカ人という顔をしているのに、イギリス人役?という違和感もある。ただし、すばらしい演技を見せる。

また、作中で「怪物」が物語を語るのだが、その時のアニメーションが見事だ。現実のシーンからスムーズに移行し、「怪物」の語りにあわせてなめらかに進む。

主人公はいろいろな問題を起こすが、何をしてもなぜか罰せられない。いわば透明人間のような存在だったのだが、最後に「あること」を受け入れることによって、彼も変わるのだろう。

過酷すぎる現実を少年が受け入れるまでの物語。虚構と現実の区別が曖昧な年頃を絶妙な感覚で描いている。じっくり感情移入して観るのがいい作品だ。

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