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読んだ本についてあれこれ語るマガジン

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2022年12月の記事一覧

「シェルタリング・スカイ」(1949年)

「シェルタリング・スカイ」(1949年)

北アフリカを旅する三人の男女が物語の中心になる。
主人公はポートという男で、妻がキット。他にタナーという男がいる。
三人がなんのために北アフリカを旅しているのかは、明確には明かされない。ポートが望んだから、という程度の説明しかなされない。
迷宮のような街をさまようシーンが多く、読みながら、人生そのものと重ね合わせているのは、この小説の読み方としては安直すぎるのかもしれない。

人間の心情と、風景描

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ヴィトゲンシュタイン「論考」

ヴィトゲンシュタインの「論考」。
理解できたとはとても言えないのだが、世界を論理で分解していく過程がとてもいい。研ぎ澄まされ、洗練された文章にほれぼれする。

「1 世界は、そうであることのすべてである。」から、「7 語ることができないことについては、沈黙するしかない。」まで、ヴィトゲンシュタインは言葉を用いて、世界の在り方を証明していく。
「1.1 世界は、事実の総体である。事物の総体ではない。

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「金魚撩乱」

「金魚撩乱」

1937年の小説。
物語の構成はシンプルだ。
金持ちの娘真佐子、金魚屋の息子復一。ふたりは幼馴染であった。最初、復一は真佐子をいじめていたのだが、ある日、ちょっとした復讐をされ、怖れに似た感情を抱くようになる。その後、ふたりは成長し、復一は金魚の研究に没頭するようになる。真佐子は他の男と結婚して子どもを産む。崖の上に暮らす真佐子と、崖の下で暮らす復一。復一は真佐子に恋焦がれて、真佐子以上の金魚を開

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