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『現代短歌』2021年7月号

おかえりといってらっしゃい言えぬ場所へ子ら二人とも行ってしまえり 前田康子 子が巣立つことは成長で喜ばしいこと。自分もそうして親元から巣立った。が、実際に子に去られた後、毎日の当たり前の言葉掛けをしないことの空白感が身に迫ってくるのだ。

この部屋をだんだん嫌ひになるぼくを感じないやう暮らしてゐるよ 染野太朗 慣れ親しんだはずの物や人が、次第に厭わしくなる。それを感じてしまっては日常生活に支障を来たすから、感じないようにする。わざと鈍感になって。何でもない何でもないと自分に言い聞かせながら。

2021.6.14.Twitterより編集再掲