見出し画像

『現代短歌』2021年5月号(3)

執着をなくしてしまうことが死かベージュのカーディガン吊るされて 東直子 生きる意欲を失って、人や物に対する執着を失って、それで生きていても精神的には死んでいるということか。地味なベージュのカーディガンがその状況を象徴している。

 なんだろう、この一連のこの寂しさ、薄暗さは。東直子と言えば明るいパステルカラーのイメージがあったが、この一連は、モノトーン、褐色系。総じて暗く重い。円熟とか渋みとかとは違う印象。何か作者から絶望とか諦念に近い感情が出ているかのようだ。

⑥篠弘『戦争と歌人』書評 中西亮太〈(三枝昻之の書は)当時の作品を読むに当たって時代背景の違いを認めるということであり、現代の基準を安易に適用して評価することはしない〉〈篠は三枝前掲書が出た後もその影響を受けず、木俣流の評価基準を変えることはなかったと言える。〉

 疑問点については、その書のみならず関連書も読み込んで書く。また〈本書の形式は(…)一人の歌人に注目してその変遷を論じる作歌論が中心である。(…)一首の歌をより深く読む方法として作家論の可能性を改めて示した…〉と評価すべき点にも、明快に言及している。まさに書評の最良の形だ。

⑦書評『ビギナーズラック』酎ハイを手に平野部は心まで広がっていくみたいな夜だ 阿波野巧也:寺井龍哉〈非情にして迅速な時の流れに抵抗するよすがとして、日常のなかのささやかな喜びがある。〉寺井の評で改めてこの歌を読んだ。気分が比喩として使われている文体が新しい。

①~⑥2021.4.8. ⑦2021.5.20.Twitterより編集再掲