『現代短歌新聞』2024年1月号
①子の乳歯十九本を納めるは妄執だからこの瓶のなか 今野寿美 たしかに妄執。一人っ子の親なればこそとも思う。瓶の中でカチャカチャと鳴らしているのだろうか。乳歯の数は全部で二十本とか。ここまで来るとなぜコンプリートしなかったのか聞きたくなる。
②黒瀬珂瀾「ニュートラルな偏り」
〈短歌ブームという言葉もある程度は落ち着いたが、短歌を文脈から切り離したニュートラルなアイテムに組み替える過程こそが短歌ブームだったのだ。〉
この説明は腑に落ちる。黒瀬はこの主張を繰り返し言っているようにも思う。
この文章の冒頭で引かれているジョージアのCMの短歌は上手いな。著作権がありそうで引かないが、コピーライターが作ったのだろうか。今どきの若者ってこういう風でしょという結句での型の嵌め方が手慣れている。(「いいから」は「いいなら」では?)
③小塩卓哉「短歌文法道場」
返り咲きの花をこぼして崖の上(へ)の樹のさびしさは見られたりけり 宮原望子
〈「たり」の下に過去の助動詞「けり」が付くことで、「たのだなあ」と、気づかなかったことに気づいた詠嘆を表します。〉
完了+過去、で詠嘆を表す。
2024.1.31. Twitterより編集再掲