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角川『短歌』2023年7月号

何の種蒔きても生えぬ鉢ひとつ何か生えぬかと時をり見つむ 花山多佳子 本当ならちょっと怖い。種を変えれば、何かは生えてきそうなものだが。そして多分種蒔きは諦めたはずなのに、何かが生えないかと時折り見ている主体の行動もなかなか不思議だ。

込み合っていますと電話の音声が嘘をつきおり人減らされて 松村由利子 確かに最近電話で問い合わせると必ず「込み合っています」と言われる。込み合ってるんじゃなくて対応する人が減らされたのだ。電話の音声が意志的に嘘をついているようで、人間臭く思える。

一泊二日が終われば旅を目薬と本と洗濯物に解体する 竹中優子 荷物を、ではなく、旅を解体する、という表現がいいと思った。たしかに、と思わせる説得力がある。本と洗濯物は誰でもありそうだが、目薬に主体の個性が出ている。

2023.7.12. Twitterより編集再掲

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