『うた新聞』2023年7月号
①田中拓也「信綱の教育観」
佐佐木信綱の多くの業績の中から「教育者」の側面に的を絞った論。歌人、日本文学研究者としてとはまた違う面で興味深い。知らなかったエピソードばかりだ。
〈(小野寺百合子は)信綱に弟子入りをし、歌の稽古を受けるようになった。その時の指導は毎週土曜日に信綱宅で美濃紙に記した十首の添削を受けるというものであった。〉
ある時代まで普通であった一対一の歌の稽古は、旧弊であるとか宗匠主義であるとか、批判されがちだ。考えてみれば、佐佐木信綱に週一回、一対一で歌を教われるなんて、ものすごく贅沢なことだ。他の歌人でもこの種のエピソードを聞いたことがあるけど、いつぐらいまでこのような指導が行われていたのだろうか。
②遠藤由季「作品時評」
花束をほどいて死より還元す傷ついた足を水へと放つ 川本千栄
〈水切りをし、花束を還元=蘇生させようとするその行為に、傷を負った自らの内面も蘇生させようとする祈りがある。〉
とてもうれしい評をいただきました。ありがとうございます!
③川本千栄「鈴木加成太『うすがみの銀河』評」
手花火の匂いをのこす水色のバケツに百合の花は浸りて 鈴木加成太
街が海にうすくかたむく夜明けへと朝顔は千の巻き傘ひらく
歌集評を書かせていただきました。とても美しい歌集です。ぜひお読み下さい!
2023.7.27.~28. Twitterより編集再掲