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『まひる野』2024年7月号

狩峰隆希「詞書による時事の後景化」
 〈五十日間にわたって、その日の時事をピックアップした詞書が一首ごとに付されている。いっぽう、歌自体は詞書の内容と関連したものではなく、全体を通して日常詠の色合いが強い。〉
 大口玲子連作「この世の片隅で」について。
 〈本来詞書とは、一首に収まりきらない情報を補い、歌を下支えするものとしてあるが、一見してわかるようにこの連作の場合はそれとは異なる役割をもっている。(…)時事と日常の分立、ここにこの連作の狙いがある。〉  
 「特集 時事詠を考える」の中の一篇。すごく面白い。
 時事詠を考える特集で、時事を詞書にした大口の連作を扱って、時事と日常の分立という作者の狙いを切り出したのだが、この「しれっと関係無いことを述べている詞書」という手法は、特に最近、多くの作者に見られる。それを論として立てた点、目の付け所が鋭いと思った。

2024.7.17. Twitterより編集再掲

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