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『現代短歌新聞』2024年5月号

①小塩卓哉〈日本語の歴史の流れに沿って言えば、中世末期から近世初期にかけて体系的に二段活用が一段化したのだと言えます。〉
 上一段・上二段、下一段・下二段活用について。こういう、いつ頃変化したとかいう話に興味がある。
〈現代の上一段活用を文語に戻すには、特定の十語程を憶えておけば、それ以外は全て上二段活用となります〉
〈高校の古典の授業では、上一段活用の動詞「干(乾)る」「射る・鋳る」「着る」「似る・煮る」「見る・顧みる」「居る・率る」等を「ひいきにみいる」と語呂合わせで覚えたかと思います〉
〈下一段活用においては、文語は「蹴る」一語だけなので、現代語の下一段活用の動詞を文語にするときには「蹴る」以外を下二段活用にすればよい(…)〉
 古典の授業は読解オンリーで、作文することは無かったからな。こうして意識しないと現代語に引っ張られがち。

どの首も細きものゆゑ石棺の天使の首無くなつてゐる 伊藤京子 連作の一首前には剥がされたイエスの壁画が詠まれている。この歌の天使も意図的に首を折られたのだろう。背景に宗教上の対立があるのだろうが、上句が理由のように詠まれているところに惹かれる。

ゑごの樹の新芽に雨の降る午後をわれは苦しむ人を憎んで 広坂早苗 上句の自然のしっとりとした美しさと、下句の人間関係の苦悩。はっきりした対比が、四句五句の倒置でさらに際立つ。主体はおそらく静かに樹を見つめながら心の中で煩悶しているのだろう。

2024.6.3. Twitterより編集再掲

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