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『第三十九回子規顕彰全国短歌大会入賞歌集』

記念寄稿・吉川宏志「子規の〈写実〉を再考する」

〈写実的な表現は、見る人をその場にいるような思いにさせます。今ここではない別の空間に引き込むことによって、心を共鳴させる。〉写実はただ物を写すだけではない…子規の論を現代によみがえらせる。

〈なぜこうした(写生の)歌が、読者にも臨場感豊かに感じられるのか。それは、意外性のある細部が、生き生きと目に見えてくるからではないでしょうか。〉〈どうも人間には、自分の予想をわずかに裏切るものを知覚したとき、リアルに感じるという心理的傾向があるのではないでしょうか。〉

〈自分の想定の中にはなかった〈他なるもの〉を、写実は呼び込むことになる。〉作者が自分の想定の中だけで作っている歌には無い、写実の真の価値について述べた論。昨今言われているリアリズム、その定義再考にも大きな役割を果たす論だろう。吉川のこの論、ぜひ多くの人に読んでもらいたい。

2022.2.19.Twitterより編集再掲