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『短歌研究』2024年2月号

アイアイは〈知らない〉の意味 声あはせ歌つてゐたよ昭和の子ども 米川千嘉子 アイアイの歌は確かに歌っていた。明るく楽しい歌だ。しかしこの一連ではどこか不気味な生き物として描かれている。登場する動物全てに作者の欠落感が投影されているかのようだ。

かたはらにたれか黙せるゆめにして沈丁花(ぢんちやう)の香をともにかぎゐつ 横山未来子 誰かが黙って自分の隣りに座っている。誰だかわからない。その人と一緒に沈丁花の花の香りを嗅いでいた。誰かわからない、匂いだけ、というのが夢らしいリアリティ。

詠みながら泣くなんてこと 冬の陽がなほ傾いて影を長くす 染野太朗 二句切れ。一字空けで切れを強調する。そこに何かが欠落している。「ないと思ってたのに」ぐらいだろうか。でも詠みながら泣いている。韻律に乗って心が露わになり、泣いてしまうのだ。

2024.3.3.~4. Twitterより編集再掲

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