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『短歌研究』2023年12月号

①尾﨑朗子「2023年作品展望」
反吐まみれのシドとナンシー知らざりし正気は鈍器わが手に重い 川本千栄〈欲望に身を投じることなく、「正気」だからこそ逃げ場のない悲しみに沈むことがある。〉挙げていただき、またとてもうれしい評をありがとうございます!
 この歌は『角川短歌年鑑』でも中島裕介様に挙げていただいています。とてもうれしいです。

②対談「百年の視点で見る「現代短歌史」」
三枝昻之〈わたしは大正期の「アララギ」の動きには否定的なんです。島木赤彦の狭い人格主義、斎藤茂吉の過剰な他者批判、鬱陶しいですね。〉
 爆笑。言っちゃう?鬱陶しいって?もはや歴史上の人物だからね…。

③対談
三枝昻之〈大正期とは「アララギ」が制覇した時代だというのは、茂吉の「自己PR」だったと思うんです。木俣修さんの短歌史は茂吉のPRをそのまま踏襲した節があります。〉
 言った者勝ちみたいな?この後の三枝の発言でアララギ以外の歌人も活発だったと分かる。

④対談
三枝昻之〈『昭和短歌の精神史』を書いた時に、栗木京子さんに「これは男の短歌史だ」と言われて、そう言われればそうだなあと。〉
 栗木の批判はもっともだし、三枝がそれに同感して、しかも今の時点で口にしているのは結構大事なことだと思う。

⑤対談
佐佐木幸綱〈佐佐木信綱には、「お稽古日」というのがあった。(…)時間を取って歌の指導をして謝礼をもらうわけです。信綱の家の前の通りには、金持ちの弟子の人力車がずらっと家の前に並んだっていう話は残ってますね。〉
 雰囲気的には旧派っぽい。明治っぽいというか。人力車が何ともレトロ。マンツーマンで信綱に「お稽古」してもらえるなら、それはそれで羨ましい話。『うた新聞』連載中の松澤俊二「短歌(ほぼ)百年前」に載っていた話にも通じるものがある。

⑥対談
三枝昻之〈近代短歌のキーワードは、写生とそれから文語定型。文語でもなくて、定型でもなくて、みんなが手探りをして、様々な広がりを持ったのが昭和の初期だった。〉
 途中まで、今の話かと思った。百年前と今が似ているのか、同じことを繰り返しているのか。

⑦永山裕美「「この十年の変化」で思うこと」
〈詩歌専門の出版社は買い切りや返品に了解がいることが多く、〉〈左右社はある時から返品了解がいらなくなり、書肆侃侃房、ナナロク社も返品に柔軟に対応してくれる。〉
 この文を読むと、流通の問題が良く分かる。寄贈文化になぜ販売というルート入って来たか等勉強になる。
〈ここまで販売に協力的な詩歌の出版社が、新味を出したい書店や、各地に増えた独立系書店の売り場をあっという間に席捲したのはある意味、当然のことだ。〉
 「個性的」な書店の品揃えが似通ってしまう理由等も。

2023.12.30. Twitterより編集再掲


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