『短歌往来』2023年4月号
①江畑實「創世神話 塚本邦雄」
〈二十首の作品は「初出」と「歌集」とで、三首にごくわずかな異同(一、二文字の)はあっても、すべて同一作である。だが配列を変えることで、掲出の通り冒頭部分の印象を大きく異ならせた。なぜか。それは塚本が、歌集『感幻樂』冒頭に重要なメッセージを込めようとしたからである。〉
塚本邦雄の『感幻樂』の冒頭部分を初出と比較して、配列の違いがどんな効果を生み出したか考察している。確かに配列が違うと、歌集冒頭なら特に印象が違う。連作の歌順ということを考えさせられる。
②森垣岳「その花の品種は何か」
〈歌人が素材として扱える植物は時代と共にひたすら増加していっている。1つのピークは江戸時代に発生した園芸ブームだ。メンデルの法則が発見される以前に日本人は経験的に交雑による品種改良を行ってきた。さらに地方に存在する遺伝的に多様な品種は参勤交代によって江戸に集約され改良を行う際の貴重な遺伝資源として利用された。〉
これ、面白い。江戸の園芸ブームで色々な品種改良された。染井吉野もその一つだ。ここまでは知っていても、それに参勤交代が寄与していたとは驚いた。
③この世にはもうゐぬ父母と白猫と駅のベンチでさくら浴びをり 田中律子 夢なのか、そういう幻影を見たいという願望か。生きていた時と同じように、散る桜を浴びていてほしい。猫も一緒に駅のベンチで、というところがありえないのだが、夢としては逆にリアルだ。
④戦場に死ねば生ごみとなるからだ春の夜のばして体操をする 古谷円 戦場に死ぬということを端的に即物的に表現した上句。どこかのどかな下句。「からだ」の語で繋がれて上下の対比が効いている。やはり「生ごみ」が眼目だろう。「ごみ」では弱すぎるのだ。
2023.4.11. Twitterより編集再掲