見出し画像

『短歌研究』2021年4月号(2)

⑦斉藤斎藤〈A この前歌会始の話をしたろう。あれ、ちょっと失敗しちゃった。 B どうして。おもしろかったじゃない、なかなか。〉これは詞書の最初の部分だが、石川啄木の「一利己主義者と友人との対話」の形式を借りているのだろう。斉藤の詞書はいつもとても長く、以前は何の意図があるのか気になった。しかし、この連載ぐらいから、詞書が面白い、と思うようになった。どこまでが創作でどこまでが引用なのか、パッチワークのようになっていて、とっさに分からないことも多いが。

⑧松村由利子「ジャーナリスト与謝野晶子」え?最終回?まだまだ読みたいんですけど。〈(与謝野)寛が出馬する意思を明らかにした当初、晶子は長年二人を経済的に援助していた小林天眠や寛の弟に、立候補を思いとどまるよう説得を依頼した。〉あー…。ダメだよ鉄幹。

〈選挙資金を工面できるかどうか危ぶまれるうえ、(…)〉選挙って湯水のようにお金使うし、先の欧州行きだって晶子がだいぶ頑張ってお金を工面したのではなかったのか。この選挙資金のどのぐらいを鉄幹自身が用意して、どのぐらいを晶子が工面したか知りたいわ。

〈しかし、晶子の協力もむなしく、寛は得票わずか九十九票で落選した。〉言わんこっちゃない。さぞかし世論は面白がったことだろう。晶子はどこかの時点でハッと我にかえり、「自分は何のために働いてるのか?」と疑問に思わなかったのだろうか。鉄幹は重いお荷物だったのではないか。

⑨松村由利子「ジャーナリスト与謝野晶子」〈評論活動の中心となった横浜貿易新報の連載は、一九三五年三月十日付で終了した。三月十三日に夫・寛が入院し、二十六日に肺炎で亡くなったことが連載終了の大きな理由と思われる。〉傍目にはどう見えても晶子の原動力は鉄幹だった。

『白桜集』に収められた鉄幹への挽歌は、最大級の恋文だ。長年連れ添い、何人もの子を為した夫への挽歌(フツーちょっと枯れてもいい)がこれか、と思われるほどの深い愛。晶子にとって鉄幹はやはり老いても熱愛の対象だったのか。他人にはよく分からないところ。

〈「政治を男子の独占すべき事業だとする思想は根拠のない思想である。憲法の精神は人間の自由を男女によって差別していない。」〉これを大日本帝国憲法下で言えてしまう晶子。終わっちゃった連載だけどもっと続きが読みたい。鉄幹への思いも解説してほしいです!

2021.4.30.~5.1.Twitterより編集再掲