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『現代短歌』2021年1月号
①判型が変わった。ちょっとハンディになってかばんに入れやすい。
②自転車はあしながばちを追い抜いて抜き返されて水辺に到る 西藤定 足長蜂は脚を垂れてしばらくホバリングしたり、急にぶーんと飛んだりする。蜂に抜かれるような速度でゆったりと自転車を漕いでいるのだろう。「水辺」からも、自然の中にいることが感じられる、気分のいい歌。
③銀のフォークをミルクレープに沈めゆく力加減であなたに沈む 田村穂隆 ただのケーキではなくミルクレープなのが具体的。クレープの面は肌を思わせる。重ね合わされてクリームが挟まれ、圧すと軽い反発力がある。「沈む」は身体的にも精神的にも深く関わる、ということだと思う。
④故障中 貼り紙がはためいている あなたはどんなふうにされたの 石畑由紀子 何かに「故障中」という貼り紙がはためく。そういう景を描いていたのに、途中でいきなり語りかける文体に変わる。故障中のモノを見て、作中主体が「あなた」とつぶやいていると取るのが普通だろう。
しかし、その文体の急な転換に、読者は自分が語りかけられているような感覚を持つ。自分が今までに何かの被害に遭っていて、同様の被害を受けた作中主体に「あなたはどんなふうにされたの」と問われているような驚きを感じるのだ。
⑤抽象的思考の出来る人間がこんなに揃っていて具体的に駄目 野口和夫 論としての色々を口では言うが、実際に動くとなると全然使えない人たち。その人たち以外の、補助的な役職の人が一番実務が出来たりする。組織あるあるだ。「具体的に駄目」が言えてて笑った。
2020.11.26.~29.Twitterより編集再掲