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「Present」の意味に立ち返る:ハイブリッド型イベントを通した価値提供とは

Plug and Play Japanのアクセラレータープログラムの成果発表の場である「Winter/Spring 2021 Summit」が終了しました。今回のEXPO(テーマごとの成果発表会)では、イベント会場でのピッチをオンラインで配信するという「ハイブリッド型」での開催となりました。スタートアップ14社のピッチに加え、パートナー企業4社からリバースピッチにご登壇いただき、コロナ禍で人と人とを結びつけるための最大公約数を提案したイベントとなりました。

初のハイブリッドEXPOを開催

Plug and Play Kyotoでは、これまでに2回EXPOを開催(2020年5月・10月)していますが、2回ともオンラインでの開催でした。
新型コロナウイルス感染状況が日々変わり、緊急事態宣言の解除時期も未定の中、オンラインのみの開催にするか、それとも観客を会場に入れるかどうか、ギリギリまで難しい判断を迫られました。最終的には「スタートアップとオーディエンスのエンゲージメントを高め、ネットワーキングの機会を最大限増やす」という価値を重視し、ハイブリッド型での開催となりました。

会場に選んだのは京都産業会館ホール。各参加者が十分に距離を保ってイベントを観賞でき、安心してネットワーキングできるようにアクリルパネルつきのブースも設けました。

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なぜ、ハイブリッドだったのか?

2020年3月以降、Plug and Play Japanではアクセラレータープログラムをすべてオンラインで開催してきました。オンラインとオフラインのイベントでのコミュニケーションを比較した際、それぞれのメリット/デメリットに関して、簡単にまとめると以下のようになります。


オフライン(リアル会場)開催:

○ 目の前に人がいることによる緊張感:双方が真剣に話を聞く姿勢をとれる
○ コミットメントの高さをアピールできる
○ 話を聞いて、すぐに質問でき、すぐに回答がもらえる
○ ちょっとした質問をカジュアルに聞くことができる
○ 自分が想定していなかった人やアイデアとの出会いが得られる
○ 実際に会って話すことでお互いの記憶に残りやすい
○ 相手の人となりや、自分に対する興味・関心度合いを察知できる
× 移動に時間とコストがかかる
× 実際に話をできる人の数が限られる
× あまり興味がない人とでも無理にしゃべらないといけない場合がある


オンライン(バーチャル会場)開催:
○ 話を聞きたい人のトークだけを集中して聞くことができる
○ それほど興味がないイベントでも、参考のために「のぞく」ことが可能
○ 話を聞きながら関連リンクを調べたり、情報をシェアしたりしやすい
○ 移動時間とコストを節約できる
○ アーカイブがある場合、あとから情報収集することが可能
○ 地理・時差にしばられず様々な人と交流できる
○ 目当ての人の時間や都合を気にせず気軽にネットワーキングできる
× 雑談の機会が少ないため、ある程度確定的な目的や質問を持って話しかけないと会話が続かず、お互いの共通点や可能性を模索する余地が少ない
× 記憶に残りづらい
× 相当興味のある内容でないと集中して話を聞くことが難しい
× 双方の期待値や温度感が伝わりづらく、やりとりのスピードやモメンタムに欠ける
× 参加者のITリテラシーにより、体験や満足度にばらつきが発生しやすい


ハイブリッド開催のメリット:

○ コミットメントの高い人だけが会場に来る:密度の濃いネットワーキングが可能
○ 単なる情報収集を目的としている人にとっては、オンライン視聴を選択することで会場に足を運ぶコストが削減できる
○ オフライン会場に参加できない人にも、オンライン会場という選択肢があることで参加のハードルが下がる

「プレゼンテーション」という言葉の語源は「Present=その前にいること」。多くの人が物理的に同じ空間に存在することが難しくなってしまった現在、オーディエンスがそれぞれの事情に合った参加方法(オフライン/オンライン)を選ぶことができるハイブリッド型イベントという方法が、今後ひとつのスタンダードとして定着していくのではないかと感じさせられたEXPOでした。

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Health Batch 3の採択スタートアップ

2020年の冬から始まり、2021年の春に終了した今回のBatchは、Plug and Play Kyotoにとっては3回目のBatchとなります。今回採択したスタートアップは合計10社(国内6社:海外4社)。そのうち、京都会場には5社がオフラインで登壇しました。

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エーテンラボ
より良い習慣づくりを支援するモバイルヘルスケアアプリ「ミンチャレ」の開発

bitbiome
シングルセルゲノム解析プラットフォームによる微生物関連製品・サービス開発

Canary Speech
音声分析により神経疾患を検出するヘルスケア業界向けのAIソフトウェアの開発

Dinow
DNA損傷の評価及び放射線の健康影響評価や日常的な健康状態のモニタリング

Freer Logic
自動車・家電・トレーニング用の神経技術を開発

Liquid Mine
血液がん(白血病)に対するリキッドバイオプシーの提供

Neurotrack Technologies
デジタル評価プラットフォームによるアルツハイマー病などの症状の軽減を支援

リスク計測テクノロジーズ
声だけで簡単に心の状態を可視化する「マインドヘルス計測システム」の提供

S'UIMIN
自宅で簡単にできる臨床レベルの睡眠計測サービスの提供

Sanolla
AIを活用したプライマリケア診断ソリューションの提供

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(会場に来てくれたスタートアップとパートナーのみなさんからの寄せ書き。直筆の熱いメッセージをいただきました!)

卒業生スタートアップのその後:Lightning Pitch

また、今回は過去のBatchに採択したスタートアップの中から4社がAlumni Startupとして登壇。Lightning Pitchという、1分間の短いピッチの中でプログラム終了後からどのように進化・成長したかを披露してくださいました。

EXPOの締め括りには、オーディエンスからの投票をもとにBest Startupを決定。以下の2社が選ばれました。

Best International Startup:Freer Logic
Best Japanese Startup:Liquid Mine

今回のBatchを振り返って

3ヶ月間、実際に会うことがなかった方々が初めて一堂に会し、「初めまして!」の声が多く聞かれた今回のEXPO。オンラインから登壇してくださったスタートアップに対しても、Zoomを介してQ&Aを実施するなど、会場との一体感を感じていただけるような仕組みは今後も継続していきたいと考えています。

Plug and Play Japanが提供する「場」をプロデュースする価値に立ち返り、これからも多くのスタートアップをオンライン/オフライン問わず支援していきたいと思いました。

次のBatchはまもなくスタート。9月に予定している次回の成果発表会「Summer/Fall 2021 Summit」では、新しいテーマ「New Materials」も加わります。ここ京都で、新しいスタートアップに会えるのを楽しみにしています!


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