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そこに眠るのは君か

俺は、ついに辿り着いた。世界の果てに。

そして絶望していた。

足元にはここで力尽きた旅人の白骨死体が転がっている。
どのくらい前に死んだのだろうか。と言っても、ここでは時間などまるで意味を成さない。

こんな所でお前はいったい何を見たかったんだ。

話は今から八年前に遡る。
俺はベルタウンで雇われ用心棒をしていた。

世界で一番の治安の悪い街だ。仕事には困らなかった。

そんなある日、裏道で瀕死のガキを見つけた。
ひどい怪我だった。

そのまま捨て置くこともできたが、俺はそうしなかった。
同じように路地裏で死んじまった弟を思い出したんだ。
それで、ガキを連れて帰った。

ベルタウンに医者はいない。自力で治療できない奴は死ぬ。
奴の傷は深かったが致命傷ではなかった。それに回復も早かった。

俺が拾ったガキは名をネロと言った。まるで猫みたいな名だが、悪趣味な酒場の女主人に実際に飼われてたらしい。
何をしたか知らんが追い出されたのだと奴は話した。

金を貯めたいと言うので、俺はネロに仕事を与え家に住まわせてやることにした。
ネロは不思議な奴だった。無口だが頭は切れる。何でも卒なくこなした。

そんな生活が続いたある日、ネロが血まみれになって帰って来た。奴の血ではなかった。
例の女主人とその一派を皆殺しにしちまったんだ。俺からくすねたナイフ一本で。

ガキ一人になぜそんな事ができたのか。
その理由は後に嫌と言うほど知ることになる。

まあ、とにかくこうしてネロは逃亡者になった。
それを見据えて金を貯めてたのかと思ったが、違った。

奴は全額差し出すと、用心棒として俺を雇いたいと言い出した。
街を出て成し遂げるべきことがあるから一緒に来て欲しいと言うのだ。

正直、奴の出した金では足りない依頼だったが、俺は引き受けた。
なぜならこの時には既に、俺はすっかりネロに魅了されてちまっていたんだ。

奴について行こうと決めた。

ネロの行先がこの世の果てだとは知らずに。

【つづく】

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