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まっさらな自分に戻れる場所


これからどんな道があるのだろう、
どれだけ登るのだろう、
不安と期待。一歩、一歩確実に進む。
息が上がる。
進んできた道をふりかえって息をつく。
少し休憩する。また進む。
何も考えず、ただ前を向いて。


わたしは、今年の春から登山をはじめた。

ずっと山には興味があった。それは自然が元々好きだったのと、憧れの人の影響で。
でもなかなかはじめの一歩が出せずにいた。

転機は去年の秋。一人旅に長野に行き、そこで初めて長野の山々、日本アルプスを見た。
雄大で凛々しくて、目の前にすると胸が熱くなった。深呼吸したくなるような感覚と、背筋が伸びる感覚を同時に味わった。そして、やっぱり山に登りたいと確信した。

その頃、山は冬に差し掛かる時期で、オフシーズンになる手前だったから、春が来たら登ろうと決めた。それから冬の間に、靴やウェアを揃えた。わくわくして、その時間がすごく楽しかったことを覚えている。

春が待ち遠しかった。

そんな中、今年の春に職場が変わった。
転職は望んでいたことだし、頑張るしかないことは分かっているけどどうにもその事実から目を背けたい自分がいて悔しかった。前よりも半分以上に休みは減ったし、働く上では避けられないお給料の問題も。やるせないことが沢山あって、やり甲斐の搾取だと思ったことは数しれない。
どうにか、“自分がしたいことだから”という理由で耐えている日もある。でもこのままでは身体は持っても、心が持たなくなるだろうと感じることも、悲しいかな否定できない。


こんな今の自分を救ってくれるひとつの時間が山に行くこと。山に行くと、ここにいていいんだって思えるし、体の底から息ができるし、色んな表情を見せてくれる景色に癒される。

初めての登山はゴールデンウィークに1000メートルに足らない山だった。簡単に登れるとこだったけど案外息が上がってきつかった。でも山頂に着くとそんなことは忘れられた。たのしかった、この感覚好きだなとも思った。しっかり、ハマった。

それから10月までに8つの山に登った。どこもそれぞれの道があり、風があり、光がある。

道中はきついし諦めて引き返したくなる瞬間もあるけど、きつい先には達成感と感動がある。何より自分がゼロに、まっさらになれる気がする。身体が、心がスっと軽くなる気がする。山に来てよかったなぁと、登る度に思う。

転職したタイミングで登山を始めたこともある意味ひとつの巡り合わせで、ご縁で、よかったなぁと思える。そういうことがひとつでもあって良かった。

きっとこれからも、時間を見つけて山に向かうだろう。まっさらになって、真っ直ぐ自分に向き合うために。
頑張ろうって気持ちを入れ替えるために。

あぁ、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込みたいな。

初めての朝駆けでみたくじゅう中岳からの朝日。眩しいね。

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