どしゃぶりからの曇り空
「このへんが悲しくなってきたら、あーー来たーーーって思うんだよ。」顔の前で手のひらをくるくるさせながら「涙が出そうになって。でも何があったとかじゃないんだ。」と続ける。「明け方泣いてたもんね。」「え?」「シュンシュン言ってたよ?」「あれは鼻が詰まってたんだよ。」「泣いていいんだよ。」そう言って笑う。
小腹が空いた私は「最近お腹が空かない」彼と、何度か足を運んでいる女店主の店に入る。食べたかったらしい塩焼きそばとおつまみセット、パクチーポテトフライを頼む。「ふぅぅぅ。やっと落ち着いてきたよ。昨日はもう終わりだーって思ってたから。」
「良かった。」そう返事してビールグラスに注がれた赤ワインを飲んだ。
少しすかされた窓から見える空はどんよりと暗い。『天気みたいなもんなんだ』いつだったか、病気を説明してくれた時に聞いた言葉を思い出す。当時、人が違ったみたいに落ち込んだ様子でかかってくる電話に戸惑った。『コントロールできないんだ』そう思い知る。本人が、ではない。他人を、だ。だって『お天気』だもの。
しっかり苦いコーヒーとなかなか切れないチョコケーキを食べて外にでる。よく眠れるように真新しい布団を買いに行く。
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