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存在と世界

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存在と世界 4

第四:死者とはいかなるものなのか1.死と死者の存在論的考察

存在論的に言えば、死者とは非実在の存在者である。もっと詳細に言えば、かつて実在であったが、今ではそうでは無いもの、既-実在としての存在者である。しかし、これ以上に、死者とはわれわれの実在世界において、単なる非実在者よりも、遥かに深い関係性を持った存在者であると言えるのだ。
死はわれわれに確実にやってくる運命である。死から逃れられる生物は

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存在と世界 3

第三:他者とはいかなるものか1.なぜ歓待が求められるのか

歓待とは、他者の無限の呼びかけに、できる限り応答することである。他者による無限の呼びかけの全てを、私は全て応答することが出来ない。私は有限であるから、他者の無限に全て応答できないのは当然である。しかし、他者はそれにもかかわらず、義務として私に「〇〇せよ」と呼びかけてくるのである。加え、私による他者への応答とは常にエゴイズムである。私の理解

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存在と世界 2

第二:世界とはいかなるものであるか。1.世界はなぜ存在しないのか

 総体としての世界、全ての存在者を包括する形での、世界は存在しない。というのも、存在しうるもの全て、存在者すべては、世界内に存在する。総体としての世界が存在するのであれば、総体としての世界は世界内に存在することとなるのである。ただし、感覚的確信が示すように、存在者の存在自体は、確認されたものであるし、デカルト的懐疑においても、「私

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存在と世界 1

第一:存在者とはなにか1.存在者とは世界内にあるすべてのものである。

 存在者とは存在するものの全て(のそれぞれ)である。存在するということは、存在しうるということである。※1 存在者しうるものは、世界のうちにある。そして、われわれ(人間だけでなく動物や植物といった、「何らかの形で存在者を捉えることが出来る」存在者)が捉えうる全てのことがらは、存在しうるものである。つまり、幻覚、妄想、空想といっ

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