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なぜか全力で避けていた金融ライターになってしまった話

今だから言うが、ライターになった当初は金融案件を全力で避けていた。

銀行員時代に24時間365日お金のことが頭から離れず、お金について考えることにホトホト嫌気がさしていたからだ。

末端中の末端の銀行員でも、一般の人よりは金融事情に詳しくなった。その一方で、お金のせいで醜くゆがんだ人間模様も直接的・間接的に目の当たりにする機会も多かった。

そんなもの誰が見たいものか!と思うものの、職業柄見ざるを得ない。その影響か、自分までお金のせいで醜くゆがんだ人間になったような気がしたものだ。

もちろんそれが銀行員の仕事だから割り切ってはいた。いちいち気にしていたら仕事にならないし。

それで感情に蓋をしながら淡々と仕事をこなしていたが、やがてそれにも慣れて少し銀行の仕事に面白みを感じてきた。

しかし、銀行をやめてからは現役時代の反動かお金のことを考えるのがホトホト嫌になった。

節約などの家計のやりくりはそれなりにやっていたが、二度と仕事としてお金に関わるのは嫌だなあ……と思っていた。

それには先ほど書いたこととは別の理由もある。むしろそちらの方が理由としては大きいかもしれない。

その理由は以下の通り。

金融事情は日々変化し続けており、ちょっとブランクがあるだけでも情報が古くなる。元銀行員だからといって、うっかり当時の知識でお金の記事を書けば、間違いだらけの情報を流す羽目になりかねなかった。

それは非常にまずいので、ライターになってからしばらくお金に関する案件は全力で避けていた次第だ。

当時かなり頻繁に「元銀行員としてお金の記事を書いてください」との依頼はあったが、家計に関する案件以外は全部断っていた。

ところが。

こちらが断っても「クレジットカードの記事を書いて下さい」と依頼してくるクライアントがいた。私が銀行員時代にクレジットカードに関する業務を長く行っていたことを知って依頼したようだ。

確かに、私はクレジットカードについて多少は精通しているので、まったくその辺の知識がない人よりはずっと詳しく正しい情報を伝えられる。

ただ、クレジットカードも私が銀行員だったころとだいぶサービス内容が違っていたので、私には現状に即した記事を書くのが難しいだろうと伝えた。

また、ブランクがあまりにも大きいことも告げ、日々変化し続ける金融事情に即した記事は絶対に書けないと言ってまた断った。

しかし、相手はそれでもまた依頼してきた。よほど人材不足だったのだろう。それで渋々話だけでも聞いてみることにした。

聞けばそれはSEO案件であり、クライアントがすでに構成を作成しているという。そこで構成を見せてもらったところ、意外にもしっかりした構成になっていた。ちょっと調べたら情報も最新のものだとわかった。

気が進まないけどやってみるか……

そう思ってその案件を請け、1年ほど延々とクレジットカードの記事を書き続けた。

その後色々あってその案件からは離脱したが、その仕事を通して自分が持つ古い銀行業務知識が意外と今でも応用できることを知った。

そこで記名記事が書ける金融系メディアに営業をかけてテストライティングに挑戦したところ、「ぜひうちのメディアで書いてください」と言っていただけた。

それが5年以上お世話になっている「マネーの達人」だ。今もこのメディアで記事を書き、数年前にはこのメディアが出版した本の執筆協力者にもなった。

この仕事を実績として公表できるようになってからは金融案件のオファーが激増。思わぬ方向に事態が動いて私はなぜか金融ライターとして活動することになったのだ。

なんとも不本意な話だったが、元銀行員の金融ライターを名乗る以上は絶対いい加減なことを書けない。死ぬほど嫌だが最新の金融事情について猛勉強しなければならないと覚悟した。

その覚悟の通り私は仕事がてら最新の金融事情を調べつくし、かろうじて金融ライターを名乗れる程度の知識がついた。

しかし金融の世界はあまりにも広い。広すぎる。現役銀行員としてン十年やってきた人ならともかく、それより職歴が短い私が入れた金融知識などたかが知れている。

それを考えると「本当に私が金融ライターを名乗っていいのか?」と今も思うのだが、数年でお金の素人向けの記事ならなんとか書けるレベルにはなった。

ただ、金融ライターとして恥ずかしい仕事をしないためにも、これからさらに金融知識をつけなければならないことも痛感している。だからこそ、継続学習を強制されるAFPになり、常に金融知識をアップデートし続ける道を選んだ。

しかしなあ……なぜそんな展開になってしまったのだろう?ライターになった当初は全然そんな予定ではなかったのに。

元々は「将来年金では足りない分を補う程度に働ければよかった」はずなのだが、今はお金のプロフェッショナルとしてさらに上を目指す羽目になっている。はなはだ不本意だ。

とはいえ、昔から私は逆らえない大きな流れに背中を強く押されるが如く、自分が想像もしなかった人生を歩み続ける運命にある。例えば海外生活とか。

おそらく金融ライターとして今歩いているのもその一つなのだろう。たぶんその大きな流れに私は逆らえない。

なら、このまま流されるしかない。流されながらこれからどうするかを考えよう。この流れがいつまで続くかわからないけど、とりあえずそのまま流れされてみようと今は考えている。

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