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壁から出てくる妖精に人生相談をしたら、うつが寛解した話 #呑みながら書きました

なんのこっちゃ、というタイトルだが、まじでこれはそのまんまなのである。わたしは約2年間、壁からにゅうっと出てくる妖精に人生相談をしていた。そして、うつが寛解した。

こちらの企画に参加させて頂いております。

Twitterやnoteでやってる方を見かけて、めっちゃ楽しそうで参加したくてうずうずしてたんだけど、なんせ「スキ」すら押せない小心者のため本祭りに乗りk¥遅れてしまった。後夜祭だけど、よろしくお願いします。

ちなみに飲んでいるのはこれ。甘いのあんまり呑まないけど、イチゴはすき。

吸ってるのはこれ。

タイトルに戻ろう。妖精との出会いのきっかけは、看護師の友人であった。そのころわたしは大学院を修了したばかりで、最初に勤めた会社を1ヶ月で辞め、6年目に突入したうつ病との付き合いをp本気で見直さなければならないと奮起していた。もうこんなやつとはやってられない、今すぐ別れなければわたしの人生棒に振る! と息を巻いていて、それでその友人に「どっかいい心療内科を知らないか」と訊ねたのだ。

当時通院していた心療内科が投薬治療しか行っていなかったため、薬は雪だるま式にごろごろ増えた。一生こんな大量の薬を飲み続けなきゃいけないのかな……と学生を終えて不安になったわたしは、ようやっと重い腰を上げて根治を目指し始めたのだった。

友人が紹介してくれた心療内科は、都内の古い雑居ビルにある個人経営の病院だった。医者はおじいちゃん先生ひとりしかおらず、他には受付の事務員さん2人だけで、なんていうか陰気くさい感じがした。お世話になっといてミソクソに貶しちゃって申し訳ないんだけど、まあ事実だから許して欲しい。

で、おじいちゃん先生の診察室があるフロアの下が、カウンセリングルームになっていた。そこでわたしのカウンセリングを担当してくれていたのが、妖精である。妖精は30代にも見えるし、50代と言われても納得できるなんというか不思議で掴みどころのない雰囲気を纏っていた。女性で、かなり美人で、優しくて、どこか生活感に欠けていた。

どう言い表したらいいかわからないんだけど、とにかくその人が何かを食べていたりトイレに行ったり洗濯物を干したり、そういう場面が想像できないのだ。妖精個人の生活はたしかにあるはずなのに、どうにもそれを感じられない人だった。だから結婚していて旦那さんがいるという話を聞いて、ひどく驚いてしまった。

一度妖精本人に、「先生はわたしがこの部屋(カウンセリングルームの小さい個室)に入ったときだけ壁から現れる妖精のように感じる」と言ってしまっやことがある。妖精は「妖精ってなんだか可愛いですね。うれしい」とふふっと笑っていた。

妖精はなかなかに辛辣であった。ライターになる決意してとりあえず派遣で入った会社の指揮命令官がとんでもなくポンコツだったんだけど、その男を「所詮彼は小物ですから」と言い放ち、うつの、というより諸悪の根源であるクソ親父を「感性が貧困なので言ってもわからないと思います」とこき下ろす。なかなかに痛快で、面白くて、魅力的な人だった。そのはずなのに、あんまりにも人間味がなさすぎて、本当に不思議なことなんだけど愛着だとか親愛の情だとかが一切わかなかった。

そういえば、まだライターになる前に予備校の講師をしていたとき、生徒のメンタルケアで悩んでいるという相談を持ちかけたら、「チカゼさんはチカゼさんです。そして、生徒さんは生徒さんです。適切な対応をするためには、同じ気持ちになってはダメ。呑まれちゃダメなんです。たとえばこういう職業だって同じ。私たちは、患者さんに踏み込まれないよう、テクニックを使っているんです」と言っていた。なるほどそのテクニックのおかげで、わたしは妖精を人間と感じられなかったのかもしれない。

妖精はわたしに無理強いをしなかった。わたしと手を繋いで心の地下室に降り、淀んだ空気の中を進んで、トラウマを閉じ込めた段ボールをひとつひとつ開封するときは、いつだってわたしのことを注意深く見てくれていた。開け方ひとつにも最新の注意を払ってくれたし、開けても納得がいかないときはわたしが首を縦に振るまで根気強く“咀嚼の仕方”を提案してくれた。

その提案はけっして押し付けがましいものではな買った。、それでは気持ちが収まらないとわたしが泣くと、あっさり「じゃあこうしたらどうでしょう」と違うやり方を示してくれるのだ。

わたしの生活の様子をmながら、精神の状態を詩才に観察しながら、進むべきところと開ける段ボールを選んでくれた。そのおかげで、やっとわたしは8年患ったうつを見事寛解させることができたのだ。

そうだ、一度だけ妖精が人間に見えたことがある。それはいつだったか、わたしが父への感情にようやっと一区切りをつけられた日だった。先生はそのときだけ、たった一度だけ、泣いていた。「よくがんばりましたね。チカゼさんがここまで来れたことがとっても嬉しい」と言って、半笑いで泣く先生を見て、わたしはなんだか事態が把握できなくてぽかんと呆けていた。

今先生のその顔を思い出すと、胸に熱いものが込み上げる。妖精さん、ありがとう。またわたしが何かダメになってしまったら、あの部屋に行くから壁からにゅうっと出てきてほしい。

カウンセリングって、変な人に当たると余計に拗れると聞く。相性もあるんだと思うけど、カウンセラーって決まった資格がなくても名乗れるから、個々人で技術の差が激しいんだそうだ。だから、自分に合うカウンセラーさんを見つけるまでけっこう時間がかかるらしい。わたしは、わたしのカウンセラーさんが妖精で本当によかった。

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