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コンニャクをつくる

出来ることならほんやくコンニャクをつくってみたい。
でもそれに近いしいものなら作っていた時期があったかもしれない。

小学校の卒業文集で書いた夢が田舎に暮らし野菜や花を育て美味しいものを食べて暮らすことだった私は大学4年生の春、谷の1番奥にある十数軒しか家がない集落に移住した。その集落に住んだのはわずか数ヶ月だったが、今でも私にとってその集落は子どもが生まれたら一緒に帰りたい場所である。
その集落に引っ越したての時、近所のおばあちゃんと仲良くなったキッカケがコンニャクだった。

たまによくわからない方言をまじえながら、おばあちゃんはコンニャクの作り方を教えてくれた。こんなにたくさんどうやって消費するんだろうって量を年に何回作っただろう。アツアツできたてのコンニャクに醤油を少しつけて食べるのが大好きだった。
おばあちゃんのコンニャクを作る時の口癖はそーだそーだで(炭酸ソーダの粉を入れてコンニャクを固める)、そーだ!そろそろソーダの準備だって言いながら毎回笑っていた。
コンニャク作りを通しておばあちゃんと仲良くなり、気づけば方言もうつって、恋バナや大学の話をするだけでなく、おばあちゃんがこの集落にお嫁にきた時の話もしてくれた。コンニャクの他にも藁細工や野菜の作り方、笹巻きや切り干し大根の作り方などいろいろなことを教えてもらった。私がおばあちゃんに教えることができたことと言えばキノコのことと草木染めのことくらいだった。一緒にお昼ごはんを作って、食べて、必殺仕事人を見ながらコタツで昼寝をして、午後の作業にとりかかる日々が大好きだった。気づけば自分の祖父母より一緒にいる時間も話した時間も長くなっていた。

そんなおばあちゃんとの思い出のコンニャクをもう一度作りたいと秋からスーパーや道の駅でコンニャク芋を探すが見つからない。結婚して新しく越してきたこの町ではコンニャク芋を作っている人は少ないようだ。クリスマスにコンニャク芋をくださいと呟いたのが聞こえたのか、文通友達がコンニャク芋を贈ってくれた。

ひとりぼっちの社宅の台所でそーだそーだとつぶやきながらコンニャクを作った。
やっぱり食べきれない量ができた。
出来立てを醤油で食べる。懐かしい。

コンニャク芋がコンニャクを作れる大きさに育つまで4年かかる。新しいこの地でまた一から畑をかりてコンニャク芋を育てて、子どもとそーだそーだと言いながらコンニャクを作る日まであと少し。

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