“桃尻娘サーガ”最終章、橋本治『雨の温州蜜柑姫』
『桃尻娘』最終章である第6部は、まるまる一冊“おみかん姫”こと醒井凉子の物語。
結婚して1児の母になっている凉子の愛娘誘拐事件(!)からスタートし、時を遡りながら、最後は第5部の終わりにそのまま繋がるかたちで。
そうして、高校一年から大人になるまでの長い大河小説で描かれた主人公たちの青春は、円環構造の中に閉じ込められてしまいました。
橋本治ははっきりとそう書いている。だから少し痛みが伴う。
いくら楽しくても、現実に生きる人間は、現実に向き合わなきゃいけない。
いくら居心地がよくても、青春の時間のなかにずっといることはできない。自分の足で歩く大人にならなきゃいけない。
でも振り返りたくなったら、“青春”はいつもそこにある。私は、私たちは、いつだってそこからスタートすればいい。
蛇が自らの尾を飲み込むような円環構造の青春物語にしながら、同時に行った未来を無限に開くようなアクロバティックなことをやってのけた『桃尻娘』という大長編小説はやっぱりすごい。
「これが一番好きだということは、多分絶対変わらない」と橋本治が書いたように、私も“桃尻娘サーガ”が一番好きで、それは多分絶対変わらない。講談社文庫版『雨の温州蜜柑姫』巻末のあとがきは、桃尻娘全6部に対するあとがきです。
「またね!!」
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