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韓国料理屋でつわりに初めて感謝した話

たまたま、韓国豆腐鍋、という看板を見かけてから、ずっと食べたくて食べたくて仕方なかった。

台湾の街中では、韓国料理屋さんをけっこう見かける。

語学学校に通っていたとき、クラスメイトに韓国人の40代の女性がいて、そのことを話してみたら、ニセモノの韓国料理、と言っていた。

台湾人好みの味になっているということだろうか。

台湾人の友達に、ここは韓国人のオーナーのお店だから本場の味で美味しいよ、と韓国料理屋さんに連れて行ってもらったこともあるので、店によって味の差が大きいのかもしれない。

今日は旦那さんと2人で外食することになったので、こないだ見かけた韓国豆腐鍋をリクエストした。

日本でも何年か前に流行ったスンドゥブチゲだ。

旦那さんはネットで評判を調べ、その見かけた店は星の数がイマイチとのことで、評判のいい別の店に決定。

わたしは韓国豆腐鍋が食べれればなんでもよかったので、店選びは完全にお任せした。

妊娠してから、味が濃いせいか鍋が食べやすく、特に鍋の豆腐が美味しく感じるようになった。

そんなわたしにとって韓国豆腐鍋はきっと適しているに違いない!

もし油っこかったら吐いちゃうかもしれないけど・・・と少々不安も抱えつつ、お店へ。

日本にあるレストランと変わらない、清潔感のある立派なお店だった。

メニューを開くと、いつも外食の時は120元(日本円で400円)の鍋を食べているのに、1品300元(日本円で1100円)くらいする!

日本にいた頃は、飲み会に行って4000円くらい平気で使っていたくせに、すっかり台湾の物価に慣れてしまって、この値段にビビる。

なるべく安いメニューを、とページをめくっていると、旦那さんが2人分のセットメニューを見つけて、これにしようと言う。

鍋、ごはん、料理2種類、デザート、飲み物のセットだった。

「こんなに食べれるかな」「ゆっくり食べればいいよ」というやりとりがあって、滅多に来られないので豪華なディナーに決定!

念願の韓国豆腐鍋のキムチ味、なんとご飯はプラスで300元くらいかかるビビンバ、牛肉の炒め物とお餅をサンチュで巻いて食べるやつ、海鮮と豆腐を混ぜて揚げたもの、飲み物は桃のジュースを頼んだ。デザートは選べず、柚子のジャムがかかった豆花だった。

きっとわたしは食べきれず、旦那さんに多く食べてもらわなきゃいけないのは目に見えていたので、密かに、なるべく旦那さんの好きなものを選んでもらうよう誘導した。

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まず運ばれてきたのは、前菜のセット。

この前菜はすべて食べ放題で、なくなったら店員さんに言えば持ってきてくれるという。

手前のポテトサラダは日本のと変わらない味で嬉しくて箸が止まらない。

これからたくさん料理が出てくるのに、いけない、と思いつつ、結局どの前菜も美味しくてペロリと平らげてしまった。

この時点ですでにかなり満足してしまう。

その次に牛肉の炒め物がくると、さすが料理にエビが出れば殻を剥いて彼女に食べさせてやるという台湾人男性、わたしは一度も皿に触れることなく、旦那さんがサンチュに巻いてはわたしに渡してくれる。

ちょっと自分の適量で巻いて食べたい気もしたが、楽なのでいいか、と身を任せ、ありがたくいただく。

これでご馳走さま、でもいいくらい、美味しかったし、お腹もそこそこ膨れてしまった。

やっとメインの豆腐鍋とビビンバが来たときには、すでに2人とも箸を持つ手が重くなっていた。

明らかにペースダウンする2人。

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これ、2人で食べ切れる人なんて本当にいるのだろうか。

今度来る時は、ごはんだけ頼んで前菜食べてればいいね、なんて言い合いながら、なんとか休み休み食べ進める。

もともと大きかったお腹が、食べ始める前よりひと回り大きくなっている。

まん丸くなったお腹をさすりながら、わたしは一旦トイレに行こうと席を立った。

トイレに向かう途中、ウッ、と急にこみ上げてきて、手で口を押さえて大急ぎでトイレに駆け込む。

妊婦は食べすぎると吐くのである。

やってしまった。

旦那さんはちょっとお高い外食をしたあとは、必ず、もったいないから吐かないで、と言うので、この事実を隠すか話すか迷いながら席に戻る。

すると、旦那さんが嬉しそうに、海鮮と豆腐の揚げ物はお持ち帰りできるって、と報告してくる。

すでに今、店員さんが包んでくれているらしい。

テーブルには具材だけ頑張って食べたビビンバの残りと豆腐鍋の残りと、1度目のおかわりの前菜がまだたくさんあるが、旦那さんはもう完全に戦意消失して箸を置いている。

旦那さんの顔を見たらやっぱり言いたくなって、さっきの事実を伝えることにする。

お腹が空っぽになった。わたし、まだまだ食べられる。

さっきはもうこれ以上、絶対に入らないと思ったのに、本当にわたしは完全にリセットされていた。

旦那さんは、もったいないと嫌な顔をしなかった。

おお、それは良かった、どんどん食べなさいと目を輝かせて言う。

しかし、店員さんが包んだものを持ってきて、ついでに、ビビンバの皿を片付けていいか、と聞くと、あっさり旦那さんがOKしてしまう。

そのまま、あれもこれも下げられそうになったが、こっちは完全にお腹がリセットされたのだ。

恥ずかしさを捨てて、そのご飯、まだ食べます!と言って、ビビンバを返してもらった。

ほとんどご飯だけしかないビビンバの残りに、前菜のキムチと豆もやしのナムルを混ぜて、韓国海苔をかけ、豆腐鍋のスープをお供に食べる。

今、初めて晩ご飯を食べ始めたのかと錯覚しそうなくらい、するすると体に入っていく。

まるでお腹がいっぱいになったのは夢か何かで、デジャブを感じつつご飯を食べているような。

それか、タイムリープでもしているような感じ。

完全に勢いを取り戻して、おいしいおいしい、とどんどん食べる。

さすがにまた吐くのは嫌なので、ちょっと胃と相談して、少しだけ残してしまったけれど。

結局、デザートの柚子ジャムの豆花まで、美味しく食べることができた。

つわりが始まってから、いつも吐いたあとは落ち込んでいたけれど。

吐いたおかげでたくさんおいしいものを食べられたね、と、旦那さんと、すごいすごいと言い合い、初めて吐いたことを喜んだ日になった。

でも、今度は頼みすぎないようにしようね。


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