(執筆:金子 惇)
このnoteでは2022年6月に南山堂から発売予定の「プライマリ・ケア研究 何を学びどう実践するか」の内容や見どころを連載形式で少しずつ紹介していきます! この書籍はWONCA(世界家庭医機構)推薦のプライマリ・ケア研究の教科書であるHow to Do Primary Care Research を翻訳したものです。この連載では各章から翻訳の時に印象に残った名言を紹介しつつ、内容について触れていきます。
⇒第1回 ⇒第2回 ⇒第3回 ⇒第4回
最終回となる今回は翻訳を終えての振り返りと、自分の研究の師である東京慈恵会医科大学 臨床疫学研究部の松島雅人先生から本書に頂いた推薦の言葉をご紹介させて頂きます。
本書の翻訳は元々、この本を多くの方に知って貰いたいという気持ちと、これを翻訳することで自分自身の学びになるはずだという思いの両方で始まりました。幅広い内容を扱っているため、自分自身が実際には使ったことがない研究手法もあり、その点についてはその都度勉強し確認しながら進めました。
翻訳作業と並行して、自分が在籍している横浜市立大学のプライマリ・ケア研究に興味がある大学院生の方々との輪読会も行いました。輪読会には上記の松島先生や、先輩であり同僚の大石愛先生(そして時には豪華ゲストの先生方)も参加して頂きました。 大学院生の皆さんの率直な質問や教員の先生方の鋭い指摘を受けて、自分の理解の不十分さに気づき翻訳を変更することもしばしばでした。また、松島先生や大石先生が研究や研究教育についての経験を共有してくださるとことで、単に本を読んでいるだけでなくその背景にあるものを一緒に学ぶことができました。
翻訳自体はあくまで原書に忠実に訳していますが、輪読会での学びを活かしてわかりにくい所・誤解をまねきそうな部分には注釈をつけました。この場を借りて、大学院生の皆さん、松島先生、大石先生に感謝申し上げます。 この本がプライマリ・ケア研究に興味を持ってくださる方が少しでも増えるきっかけになればと思っています。
最後になりますが、自分が離島で勤務しながら臨床研究を学び始めた卒後5~6年目ごろから現在まで一貫して自分のメンターであり、方法論だけでなく研究者としての姿勢を含めて多くを教えて頂いた松島先生から頂いた推薦の言葉を紹介させて頂きます。
プライマリ・ケア研究 何を学びどう実践するか 目次 SECTION Ⅰ はじめに CHAPTER 01 プライマリ・ケア研究とは何か ? CHAPTER 02 存在論,認識論,方法論,方法,研究パラダイム CHAPTER 03 トピックとリサーチクエスチョンの選び方SECTION Ⅱ プライマリ・ケア研究における革新的アプローチ CHAPTER 04 プライマリ・ケアにおける学際的研究 CHAPTER 05 量的手法と質的手法の組み合わせ CHAPTER 06 真の協働:共創とアクションリサーチ CHAPTER 07 プライマリ・ケアリサーチネットワークの設立と活用 CHAPTER 08 ビッグデータを使ったプライマリ・ケアリサーチ CHAPTER 09 ソーシャルメディアを使ったプライマリ・ケア研究 CHAPTER 10 プライマリ・ケアにおける質改善研究 CHAPTER 11 プライマリ・ケアにおけるプログラム評価SECTION Ⅲ プライマリ・ケア研究を始めるために CHAPTER 12 研究提案書をどう書くか CHAPTER 13 倫理的に研究を行うために CHAPTER 14 文献の検索と批判的吟味SECTION Ⅳ プライマリ・ケア研究のための方法と技術 CHAPTER 15 既存の研究を評価する:システマティックレビューを行うためのアプローチ CHAPTER 16 プライマリ・ケア研究における統計解析 CHAPTER 17 質問紙調査の進め方 CHAPTER 18 妥当性の研究:新しいツールの妥当性検証と古いツールの新しい環境への適用 CHAPTER 19 診断に関する検査:予測の価値を理解する CHAPTER 20 観察研究の進め方 CHAPTER 21 プライマリ・ケアにおけるランダム化比較試験 CHAPTER 22 グラウンデッド・セオリー CHAPTER 23 プライマリ・ケアにおける解釈学的現象学研究 CHAPTER 24 プライマリ・ケア研究におけるエスノグラフィー CHAPTER 25 ケーススタディ(事例研究) CHAPTER 26 プライマリ・ケア外来における相互作用分析SECTION Ⅴ 研究を発信するために CHAPTER 27 査読に通る論文の書き方 CHAPTER 28 効果的なポスターの作り方:シンプルに,視覚的に,はっきりと CHAPTER 29 プライマリ・ケア研究を発信するためにソーシャルメディアをどう使うか CHAPTER 30 政策決定者にエビデンスを届け社会的なインパクトをもたらすために SECTION Ⅵ 研究のキャパシティを広げるために CHAPTER 31 研究初学者や経験の浅い研究者をどうスーパーバイズ/メンタリングするか? CHAPTER 32 メンタリングが上手くいくための環境づくり CHAPTER 33 研究の能力を伸ばすためのアプローチ:個人,ネットワーク,組織文化 CHAPTER 34 実臨床の中に研究を組み込むために
刊行に先立って、本書籍『プライマリ・ケア研究:何を学びどう実践するか』出版記念オンライントークイベントとしてAntaa様とコラボして2回のトークイベントを行います 。
第1回「これからの日本のプライマリ・ケア研究」5月31日(火)19:00-19:30 金子惇(横浜市立大学大学院データサイエンス研究科)× 藤沼康樹(CFMD東京)⇒ 詳細・参加登録 第2回「病院総合診療医×診療所プライマリ・ケア医による研究の可能性」 6月4日(土)11:00-11:30 金子惇(横浜市立大学大学院データサイエンス研究科)× 志水太郎(獨協医科大学総合診療医学講座) ⇒詳細・参加登録
プライマリ・ケア研究 何を学びどう実践するか B5判 291頁 5,400円(税抜) 翻訳:金子 惇(横浜市立大学大学院 データサイエンス研究科 ヘルスデータサイエンス専攻) 原著:How To Do Primary Care Research edited by Felicity Goodyear-Smith and Bob Mash endorsed by the World Organization of Family Doctors (WONCA) 2022年6月 南山堂より刊行予定 ・南山堂 ・版元ドットコム ・Amazon ・楽天